メルセデス・ベンツEクラス 詳細データテスト ディーゼルセダン健在の証明 快適性は改善の余地あり
使い勝手 ★★★★★★★★☆☆
■インフォテインメント メルセデスがMBUXインターフェイスを投入して数年が経った。特徴とするのはゼロ・レイヤー・コンセプト。ナビもメディア操作もよく使う機能もホーム画面に常時置き、メニューを掘らなくても使えるというものだ。 空調操作の表示がホーム画面からなくなって、メニューに組み込まれたのは残念、とは内装の解説の中で述べたが、それ以外は大きく変わってはいない。 ナビゲーションはクリアで、入力も簡単。AR機能は大して役に立たないが、それも容易に消せるので許せる。スマートフォンとのミラーリングはワイヤレスでも有線でも接続でき、連携ぶりは上々だ。 どんどん増えているのが、各種機能とメルセデス・ミーのアカウントとの紐付けだ。テスト車はその設定が不十分だったので、ナビゲーションの渋滞情報や音声操作など、フルに性能を体験できないものもあった。オーナーになってしまえば問題ではなくなるだろうが、ゲスト扱いでは機能が適切に働かないというような面倒臭さは必要ないと思えてならない。 ■燈火類 LEDライトとしては、もっと明るいものもテストしたことはあるが、これでも十分以上には明るい。アダプティブ機能の反応はちょっと遅い。 ■ステアリングとペダル 比較的狭いフットウェルだが、2ペダルのみなので、レイアウトにお伝えするような問題はない。メルセデスはスロットルペダルをBMWほど右に押し込んでいないので、ドライビングポジションのフィールはより自然だ。
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
メルセデス・ベンツの走りのキャラクターは、このところ一貫性がなかった。英国の主力モデルはスポーツサスペンションが標準装備され、バンピーな道では過敏に感じることもある。しかしそうではなく、高級車の乗り味をどう作るか知っていることを誇示するようなクルマもまたある。標準サスペンションのPHEV、エアサスペンションのEQEやEQSなどはかなりのものだ。 残念ながら、英国メルセデスが心変わりしてエアサス仕様を導入しない限り、Eクラスのマイルドハイブリッドは前者に当てはまってしまう。PHEVには、もっとソフトな足回りを与えているのだが。 そのためE220dは、荒れた路面ではやや乗り心地がゴツゴツした感じ。とくに、速度が60km/hに満たないようなときにはそうだ。だいぶ硬めの脚で、ダンピングのクオリティもメルセデスの褒められるほうには入らない。 ところが、速度が上がると、本領を発揮するかのように足取りがよくなり、大きなバンプもアイロンをかけるように呑み込んでいく。とはいえ、パッシブの周波数選択式ダンパーは奇妙なくらい一貫性のないフィールで、ときどきバンプを見逃したように働かないことがある。しかしながら、高速道路の長距離移動においてなら、このディーゼルのEクラスはそこを目指して仕立てたのだろうと納得の走りを味わえる。 それとは裏腹に、ハンドリングは驚くほど鋭い。硬いサスペンションはコーナーでボディの水平を保ち、Pゼロは強力なグリップを発揮する。ステアリングはとにかくエクセレントだ。かなりクイックで、ロックトウロック2.2回転だが、出来のいい可変レシオ機構のおかげで、ナーバスさはまったく感じさせない。コーナーでの手応えは、それほどハードに走らせなくても徐々に高まっていく。 この乗り心地とハンドリングの組み合わせが、大型サルーンにふさわしいかは賛否あると思う。車重は2t近く、全幅はミラーを含めれば2mを超えるのだ。ハンドリングはバランスよく満足できるものだが、決して心から楽しいと言えるタイプのものではなく、重量の存在を忘れられることもなかった。 メルセデスといえば、電子制御スタビリティコントロール採用の先駆けだが、テスト車のESPシステムは緩いところがある。タイトな交差点で加速するときに、後輪がわずかながら横へ出ることがあるのだ。 もっとも、安全を損ねるほどではない。システムをオフにして、すべりやすいコンディションを走っていても、劇的なことを起こすには、ドライバーがその気になる必要があるくらい安定している。それだけに、この不意な動きに驚くドライバーもいるだろうと思えるのだ。