“ジャニーズだけじゃない”当事者が伝えたい性被害 ~後編~
■家出中に大人の男性から性被害を受けた
つじゆうさくさんは、性暴力被害ワンストップセンター専門相談員などを務めるほか、加害者が責任を問われ、被害者の回復が権利として保障される社会を目指す活動をしている。 【画像】「人生めちゃくちゃ」 知ってほしい男性の“性被害” 心療内科で信じられない対応も つじさんは、16歳の時に性被害を受けたという。「LGBTQ+」の当事者であるつじさんは、中学生の頃、恋愛は男性・女性のどちらも対象になるもの、もしくは、いずれ成長した後に、どちらかの考えに定まり、恋人ができたり結婚したりすると思っていたという。 ある日、化粧に興味を持ち、学校に化粧して行ったことがきっかけで両親とケンカをし、家出をした。「親や学校が敵」「存在を否定されたような気持ち」になったという。 家出して向かった先は、朝までやっていたという新宿のカフェ。そこで見ず知らずの大人の男性が声をかけてきたという。不信感があったものの、つじさんが当時好きだった音楽の話などをするうちに、食事に誘われ、なかなか手に入らなかった「レコードを貸してあげる」と言われ、家までついていった。 男性は自宅に着くと、当時16歳のつじさんにウイスキーを飲むよう勧めたという。体が思うように動かない状態になったつじさんに、男性は「もう寝よう」と声をかけ就寝。その後、苦しさを感じ、気がつくと、男性がつじさんの上にのっていた。「肌すべすべだね」「こういうことは経験しておいた方がいいよ」などと話しかけられた。 つじさんは、当時を振り返ると、まるで心と体が切り離されたかのような、自分自身を上から眺めているかのような不思議な感覚だったという。嫌だ、痛いと思うものの、体が動かず、「自分は木だ、痛くない」。そう自分に言い聞かせ、「早く終われ」と、ひたすら時が過ぎるのを待ったという。
■人生が暗転…「自分はバカだ、自分は汚いんだ」
不同意性交(同意のない性行為)だった。つじさんは、その後の人生が暗転したと語った。「自分はバカだ、自分はバカだ」という思いが押し寄せ、同級生や親、教師にも会いたくないと思うようになった。さらに、お風呂に入っても拭うことができない「自分は汚い」という認識があり、つらかったという。 1991年、つじさんは、性暴力被害について泣きながら訴える女性をテレビで見たことがきっかけで、自身の経験は性被害だったと認めることができたという。 それまで、過去について周囲の人に打ち明けたこともあったものの、「そんなこと言って、うそだろう」という人々の反応を受け、「冗談だよ」と開き直ることで、自分の気持ちにふたをしてきたという。そうしたことから、自身が性被害を受けたという事実を最終的に認めるまでに時間を要したのではないかと話す。