「またトラ」は日本経済にどう波及?トランプ新政権の経済政策の影響を占う(前編)
■トランプ氏の「予測不可能性」に日本企業はまずは見極めの姿勢
トランプ次期政権に対する日本企業の受け止めを取材すると、不安の声が目立つ。たとえば、LNG=液化天然ガスなど世界各地で多くのエネルギー資源を扱う総合商社は、各社がトランプ氏の再選によって予想される、脱炭素化からのエネルギー政策の転換を警戒する。 また、貿易関連企業からは、物流への影響を心配する声もあがる。「関税引き上げによって、(国際的な)インターネット通販関連の物量に影響が出るのではないか」「より予測が難しい政権になったことで、“Just in Time(需要に応じた量を生産し、在庫を抱えない生産方式)”から Just in Case(万が一に備えて従来より在庫に余裕を持たせる)重視への変化がさらに進むのではないか」などの声が漏れる。 食品大手の関係者も「北米はいま売り上げが好調なエリアなので、トランプ政権の政策で仮にアメリカ経済が減速すれば困る」と不安を口にする。 一方で、ある総合商社幹部は、「打撃を受ける部分ももちろんあるかもしれないが、我々的には大きなビジネスチャンスと捉えている。変化があるところには必ず、ビジネスチャンスがある」と述べ、したたかに新たな商機を見いだす姿勢を見せた。 また、上記のように大きな変化への警戒感が根強いエネルギー政策についても、実際の変化は限定的ではないか、という見方がある。あるエネルギー政策の専門家は、「アメリカではすでに州レベル、ビジネスレベルで再生可能エネルギー導入の動きは拡大している。アメリカでは州政府の権限が強いので、トランプ政権になっても、この動きは継続するだろう」と指摘する。 後編では、「トランプ関税」によって大きな影響を受ける可能性がある自動車業界の反応や、日米貿易交渉の展望、さらに日本製鉄によるUSスチールの買収問題についても解説する。(後編へ続く)