「またトラ」は日本経済にどう波及?トランプ新政権の経済政策の影響を占う(前編)
■政策上の最大の焦点「追加関税」の影響は
冒頭の東京商工リサーチの企業への調査で、「通貨・為替」の次に企業の関心が高かったのは、やはり「関税政策のあり方(51.5%)だった。トランプ氏はすでに、中国からの全輸入品に対して10% の追加関税を、また隣国のメキシコとカナダからの全輸入品に対して、25%の関税を課すことを表明している。 関税の賦課は、場合によっては大統領権限で行うことが可能なため、メキシコとカナダへの関税については、2025年1月20日の就任初日に大統領令に署名する意向も示した。
こうした関税措置は日本経済にどう影響するのだろうか。大和総研によれば、上記の3か国とアメリカの相互の輸出が減少することで、これらの国々に自動車の部品などの「中間財」を出荷する日本の製造業や輸出関連の非製造業の企業が影響を受ける見込みだ。 日本の実質GDPへの影響は-0.1%程度と試算されている。一見、影響は小さいように見えるが、自動車や一次金属、貿易動向の影響を受けやすい卸売り・小売業など、一部のセクターに影響が集中することに注意が必要だとしている。 さらに、アメリカと上記3か国を含めた海外経済が減速した場合、日本経済への影響が急速に拡大する可能性があり、最も影響が大きいケースでは、日本の実質GDPへの総合的な影響は、最大で-1.4%程度に拡大するリスクもあるとしている。 一方で、ある日本政府関係者は「トランプ氏は不法移民問題に直結するカナダ、メキシコに真っ先に手をつけて、成果を出したいようだ。関税はあくまで交渉のための材料であって、カナダやメキシコに対して(25%まで引き上げない代わりに)不法移民の数を減らさせるなどの政策を勝ち取る方向性なのだろう」との見方を示している。 とはいえ、同じ政府関係者は、「トランプ政権の強みは、脅しといいながらも第一次政権では、中国にも同盟国にも、実際に関税をかけているところ。本当に刀で切ってくる印象がついている」とも指摘している。各国にどの程度関税が課されるかは、アメリカと各国の二国間交渉の行方次第、と言えるのかもしれない。