マイナ保険証“賛否”以前の「違法・違憲の問題」とは? “1415人の医師・歯科医師”が国を訴えた「行政訴訟」が28日判決へ
国民には「マイナ保険証」を強制される義務はない
二関弁護士は、一部メディアの報道での表現方法が、あたかも国民にマイナ保険証の使用義務が生じるかのような誤解を招くとも指摘した。 二関弁護士:「たとえば、『現行の健康保険証を12月で廃止してマイナンバーカードに保険証機能を持たせたマイナ保険証に一本化する政府方針』といった表現がある。 これは、マイナ保険証への一本化が既定路線で、それ以外の選択肢がないかのような印象を抱かせるので、ミスリーディングだ。 マイナンバー法はマイナンバーの取得を任意としており、個人がマイナンバーの発行申請を求めないことは法律上保障されている。 健康保険証の新規発行はなされないが、代わりに資格確認書が発行されるので、マイナ保険証以外による資格確認を受ける方法は引き続き存続する」
「補助金」「診療報酬等の加点」等では賄いきれない損失も
国側は、医療機関の負担が重くなるケースについては、適用除外規定や経過措置等を設けたり、財政支援としての補助等の各種施策を講じたりしていると主張している。また、マイナ保険証の利用率が高い医療機関に対する診療報酬・調剤報酬の「加点」の制度も設けられている。 しかし、東京保険医協会理事で原告事務局長の佐藤一樹医師は、それらでは賄いきれない出費が、特に個人経営の診療所、歯科医院等の経営を圧迫している実態があると指摘する。 佐藤医師:「たとえば、地方の歯科医院は、仕事のほとんどが『虫歯』の治療や高齢者の『入れ歯』といった保険診療なので、診療報酬が月々30万円~40万円で細々と経営しているところが多い。 そういった歯科医院では、オンライン資格確認のための顔認証付きカードリーダーそのものは補助金で購入できたとしても、そのための回線を引くお金、ランニングコスト、保守料といった費用を捻出することさえ難しい。 また、そのために新しく事務員を雇う必要も出てきて、これでは経営が立ち行かないと診療所を廃業した歯科医師もいると聞いている」 一方、マイナ保険証の利用率を高めれば診療報酬等の加点が得られるので、それで賄えるのではないかという意見もあるが。 佐藤医師:「マイナンバーカードの取得はあくまでも任意なので、医療機関の方からマイナ保険証の利用を呼び掛けるにも限界がある。 患者さんのマイナ保険証によるオンライン資格確認の利用率は、9月末時点で全体でも13.87%程度にとどまっている。大病院等では利用率が高くなっている。しかし、診療所レベルだと高いところでも5%前後にとどまっている。この状況で、患者さんにマイナ保険証をたくさん使ってもらうことによって加点を受けようとしても、現実的にはきわめて難しいのではないか」