「年内入試」で合格、苦労する学生たち 大学で増える中高授業「学び直し」支援
大学入試の方法が多様化しています。一般選抜ではなく、総合型選抜や学校推薦型選抜の「年内入試」が広がり、それらの選抜方法で入学する学生の中には、学力不足が指摘されることがあります。大学で、中高の授業内容を教える「学び直し」のサポート体制が整えられています。教育ジャーナリストの小林哲夫さんが解説します。 【写真】家賃6万円、横浜でひとり暮らし 授業前には学食で「100円定食」
年内入試。 2020年代に入って、大学受験用語としてすっかり定着した。総合型選抜、学校推薦型選抜の合否判定は多くが年内に行われるため、「年内入試」と名づけられた。2023年度入試では、総合型選抜と学校推薦型選抜による入学者は、入学者全体の半数を超えた(総合型選抜+学校推薦型選抜+そのほか=約52%、一般選抜は約48%)。これは初めてのことだ。 総合型選抜は、書類や小論文、面接などで学力や意欲、大学が求める人物像と合っているかを測る。これまでの「AO入試」は、一部の大学で学力の評価が十分ではないとして、20年度からは文部科学省が学力評価を必須とするとともに、名称も変更した。 とはいっても、多くは一般選抜のように学力を厳しく問うわけではない。それよりも総合型選抜では、ある分野で突出した才能を持っている高校生がほしい。大学はキャンパスに多様性を求めたいからだ。 さまざまな才能や個性を持った学生がいれば授業は活性化し、キャンパスは盛り上がる。だが、このような学生の中には、大学での学びに苦労するケースが見られる。たとえば、①物理や化学は得意でも英語は大嫌いで成績はさっぱり、②工学分野でものづくりは大好きだが、数学の微分積分を理解していない、③経済学や社会学を勉強しているが、統計に必要な数学の基礎知識がおぼつかない、④そもそも高校で履修しなかった理系科目があってお手上げ――などだ。 多くの大学は、学生が学力不十分ゆえの、勉強や進路に対する悩みを抱えていることをわかっている。そして、彼らをサポートするための学習支援に力を入れる大学が増えている。高校、場合によっては中学までの教科をおさらいする、学び直しに力を入れるようになった。英語や数学の基礎知識をしっかり身につけるために、元高校教員が丁寧に教えることもある。大学の教養、専門の科目を理解するために必要な知識だからである。