2024年のノーベル経済学賞を受賞したダロン・アセモグル教授が語る「日本はもっと移民を受け入れて大丈夫」。そのシンプルな理由
豊かな国と貧しい国が存在するのは、社会制度が違うから。国家と社会が互いに監視しつつ成長することで自由は生まれる―そんな新説を実証した奇才が、日本を穏やかに、かつ冷静に分析した。 【写真】「富士山が見えないから切った」中国資本ホテルが隣人宅のヒノキを無断で伐採 前編記事『2024年ノーベル経済学賞を受賞した奇才、ダロン・アセモグル教授が語る「日本経済の根深い問題」』はこちらから
高齢者に働いてもらおう
―現在の日本では年間80万人以上も人口が減っています。少子高齢化問題をどう克服すればよいか、良策がありますか? どの国もこの問題に頭を悩ませています。私の祖国であるトルコでは、高齢化が進んでいるにもかかわらず早期退職を奨励し始めましたが、これは政策上の誤りです。 65歳定年制は、多くの人が大変な肉体労働に従事し、60代までに多くの病に苦しんだ時代には理にかなっていました。 ですが、現在は70代までは認知が鋭く体力もある人が多いので、自発的に望む限り、高齢者に経済的なインセンティブ(報酬)を与えて働いてもらうことは、彼らの幸福と社会にとって素晴らしいことでしょう。 一方で、出生率を上げるための単純な解決策はありません。「もっと子供をつくるように」と簡単には命令できないからです。日本や韓国では海外からの移住者や移民がほとんどいないため、少子化はより深刻です。 ―日本人には移民への拒否反応があり、政府も移民政策は取っていないという立場です。他方で、労働者確保策として外国人の受け入れは拡大、現在2%ほどの外国人比率が40年後には人口の1割に増加するという予測もあります。移民政策についてどう考えますか? 文化的な問題なので、とても難しいですね。 たとえばヨーロッパなど多くの国で少子高齢化問題がまだ深刻化していないのは、移民の受け入れに積極的だからです。日本はその選択をしていません。国民が望んでいないのであれば、移民政策を押し付けるべきではないとは思います。
世界に誇るべき文化がある
他方、日本はもっと移民を受け入れなくては経済成長できません。 日本社会や政治家たちが民主主義のプロセスを経て、移民を受け入れていく余地はあると私は思います。将来的に日本は移民大国になっても大丈夫でしょう。 その理由は、日本はとても強靭な文化を持っていると思うからです。 たとえ数十万人の移民を受け入れたからといって、日本文化が失われることはないでしょう。 ―日本文化とは、和食やおもてなし、お祭りといった伝統文化など、すべてを含むものと捉えてよいでしょうか? そうです。日本文化は、移民を受け入れることによって壊されるほど脆弱ではないのです。日本の豊饒な文化は世界に誇るべきものでしょう。 移民の受け入れについてなぜ日本ではそこまで厳しいのか、私には理解しがたい。外国人の受け入れを緩和しすぎるとアメリカのように反移民運動が起きるなど、社会が不安定になりますが、もう少し緩めてもよいのではないでしょうか。