2024年のノーベル経済学賞を受賞したダロン・アセモグル教授が語る「日本はもっと移民を受け入れて大丈夫」。そのシンプルな理由
賃上げを激しく要求すべし
―質の高い民主主義こそが、国家の繁栄をもたらすとあなたは考えています。この先の日本には何が必要ですか? 今、アメリカで目の当たりにしているのは、民主主義の深刻な弱体化です。大統領選で私はカマラ・ハリスに投票しましたが(トルコとアメリカの二重国籍を持つため投票可能)、共和党と民主党どちらも、アメリカの民主主義の健全さを蝕んでいます。政治家は積極的にウソをつき、邪魔な制度を骨抜きにしている。 それは他の多くの国でも見られます。トルコの民主主義は死んだも同然です。それに比べると、日本社会の民主主義はうまく機能しています。ただし、糾弾すべき汚職や談合はありますし、労働者はもっと激しく賃上げを要求していかなくてはならない。 他方、国家について言えば、再生可能エネルギーにもっと投資しなければなりません。ドイツや日本が原子力発電所を閉鎖したのは大きな間違いです。 原子力は他のエネルギーに移行する前の過渡的燃料として必要だからです。地域によっては原発を再稼働させたほうが良いでしょう。 自由な経済活動を維持するには、個人の暴走を防ぐ「強い国家」と、国家の暴走を防ぐ「強い社会」が両輪で成長することが必要です。民主主義のプロセスに従い、それを実現する必要があります。 (聞き手/大野和基) ダロン・アセモグル '67年、トルコ・イスタンブール生まれ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで数理経済学と計量経済学の博士号を取得。マサチューセッツ工科大学教授。共著に、『国家はなぜ衰退するのか』『自由の命運』『技術革新と不平等の1000年史』(いずれも早川書房)がある 「週刊現代」2024年11月16日・23日合併号より
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