仕事中は眠いのに、夜になると目がパッチリするのはなぜ?…寝つくタイミングは睡眠物質と覚醒力のバランスで決まる!
なんで疲れているのに眠れないの?
このような睡眠メカニズムのために、睡眠不足で日中に強い眠気を感じている人でも夕方過ぎに眠気が徐々に軽くなっていきます。 特に夜型傾向のある人は体内時計の時刻が遅れているため、深夜近くになっても脳温が高止まりしており、眠気が出てきません。そのため、さらに睡眠不足になるという悪循環に陥ります。 また不眠症の人は疲労感から、不眠で悩み始める前にふだん寝ついていた時刻の2、3時間前、ちょうど睡眠禁止ゾーンのあたりで寝床に入ることが多いため、ますます寝つかれなかったり、たとえいったん眠りに入ったとしてもすぐに中途覚醒したりしてしまいます。 このように私たちの寝つくタイミングは睡眠物質の蓄積による眠気の増大と、それに対抗する覚醒力のバランスで決まっています。適度な心身の疲労と体内時計を整えることが、規則的で質の高い睡眠にとって大事なのです。
三島和夫(みしま・かずお)
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会理事、日本学術会議連携会員。著書に「不眠症治療のパラダイムシフト」(編著、医薬ジャーナル社)、「やってはいけない眠り方」(青春新書プレイブックス)、「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(共著、日経BP社)などがある。