大人に反発しトイレで泣いた黄金期を経て──「ファン愛」とともに歩む、後藤真希36歳のいま
切符の買い方から、ファンの子たちにいろいろ教えてもらいました
そんな後藤をアイドル道に留めたのは、急増した「後藤真希ファン」の存在だった。 「私としては、『(モー娘。には)今日入ったばっかりだよ?』っていう気持ちだったんですけど、気がついたら、ファンがたくさんいて。ファンレターが詰まった段ボールで、事務所の廊下が埋まっているんですよ。プレゼントの量もすごかった。まだ子どもだったから、ぬいぐるみが多かったかな。好きだったブランドの洋服なんかも届いたりして。どうして私なんかに、みんなこんなに良くしてくれるんだろうって、びっくりしました」 ふつうの中学生だった“私”に、ファンが生まれる。後藤にとって、それは「あり得ない」ほど嬉しく、プレッシャーに押しつぶされそうになっていた心を支えてくれるものだった。この原体験から、後藤は「ファン愛」を育んでいく。ファンの面々と具体的に交流をするようになったのは、デビュー間もない頃から、ずっとだ。 「ファンの子たちがいつも、スタジオの前で手紙とかを携えて待ってるんです。駅まで世間話をしながら歩いて、じゃあね、って。私より年上も多かったから、例えば新幹線の切符の買い方とか、効率的な電車の乗り換え方、そういうこともいろいろ教えてもらいました。本当に、頼り甲斐のあるファンばかりで(笑)」
人気絶頂のアイドルが電車通勤。出待ちのファンと一緒に歩いて、世間話。今では考えられないことだが、そんなおおらかな雰囲気が、当時のモー娘。を取り巻く環境にはあったということか。 「やっぱり、実家がお店をやっていたのが大きかったと思いますね。私の母は、ものすごく明るい性格で、『みんな、おいで~』っていうタイプなんですよ。だからお店に行くと、いつも私のファンたちで溢れていました。店内に入りきらないお客さんも、即興でテーブルを作って、母が外でもてなしてあげたり」 お店は、毎日がゴマキファンのオフ会だった。ファン同士も和気藹々、それはまるで熱心な球団ファンが集まる店のような様子だったという。 「何よりも、やっぱり、ファンがいい人たちばかりなんですよ。自分のことを好きでいてくれる人たちがお店に集まってくれるって、無条件に嬉しい。気持ちも明るくなりました」