砂漠の国で地産地消に取り組むふたつの人気レストラン
90%の食材をアラブ首長国連邦国内でまかなう、地産地消の美術館レストラン〈テイブル〉。
Jaddaf Waterfront(ジャダフ・ウォーターフロント)にある〈Jameel Arts Centre(ジャミール・アーツ・センター〉は、2018年にオープンした現代美術館。中東や南アジアの作家の作品展示を中心に、ワークショップや講演会、トークショー、研究会なども行う現代アートの発信基地です。その1階にあるのが、〈teible(テイブル)〉。 オーナーのピーター・アーンさんは、韓国出身。2011年にドバイに移住し飲食ビジネスで成功を収めます。それまでドバイには地産地消を意識したレストランがほとんどなかったことから、2年間かけて地元生産者をリサーチ。ヨーロッパで料理人としての経験を積んだ伊藤雅記さんをディレクターに迎え、地産地消とサステナビリティがテーマの〈テイブル〉を2021年にオープンしました。 旬があまりないと思われがちなドバイですが、実は季節ごとの食材も豊富。〈テイブル〉では、それを最大限に生かし時期や季節でメニューを変えています。「地元農家と密接に連携し、食材の90%をアラブ首長国連邦内から調達できるようになりました。野菜や果物の60%はシャルジャのグリーン・ハート・ファームから、牛肉やラムなどの肉類はアジュマンのホーム・ミート・ファームから。牧畜農家に牛を委託して肥育させることもしています。新鮮でサステナブルな食材を調達する努力は惜しみません」とアーンさん。
ドバイ現代美術館で中東アートを体験した後に、美味な料理を味わう至福の時。
ヨーロピアンをベースにしつつ、スパイスやハーブ使いに中東のニュアンスも感じる料理はどれも軽やかで調和の取れた美味しさ。アルコールはない代わりに、味わい深いモクテルが種類豊富に揃っています。廃棄されるはずの食材から塩麹や味噌などの発酵食品を作り、フードロスを最低限に抑える試みも。それがまた、料理の味を奥深いものにしています。アーンさんがここで目指しているのは、持続可能性、季節感、シンプルさ、誠実さという4つの柱。ドバイでは新鮮な価値観でエコロジーを提唱していきたいそうです。 デーツの種を乾燥して粉砕し固めてトレイやカウンタートップにしたり、廃棄された椰子の木を繊維化して壁紙にしたり、料理だけではなく、店内の内装や小物なども可能な限り地球に優しいものを使用し、自然環境の保全に役立つようにしているとアーンさん。目の前に広がる水面を眺めながらゆっくりと楽しむ美味に癒されます。