砂漠の国で地産地消に取り組むふたつの人気レストラン
廃棄物を一切出さない、ゼロエミッション・レストランの実現へ。 シハブさんは、砂漠という過酷な気象条件での農作物の栽培研究に取り組む農学者や科学者たちのサポートにも熱心です。砂漠の生育に適した野菜の育成を研究しているICBA(国際塩水農業センター)と協働し、海水淡水化プロジェクトやそこで生じる塩分を含んだ水でも適応できる作物の開発を積極的に支援しています。 「アラブ首長国連邦の耕作可能な土地は、国土の5%しかありません。その5%を少しでも増やすことが、私たちの小さな貢献のようなものなんです」とシハブさん。 〈ボカ〉には廃棄物担当者という役職が存在します。ゴミは、6通りに厳密に分別され、それぞれリサイクルに回されます。たとえば、使用済みの油はドバイの地元企業に送られ、バイオディーゼルになります。「私たちはアラブ首長国連邦のスタートアップ企業である〈The Waste Lab(廃棄物ラボ)〉という会社と協力し、レストランから出る生ゴミを大量に回収してコンポストを作っています。そうしてできた堆肥で道場改良をして、新しく豊かな表土を国内に作る準備もしているんです」 ドバイ産のトマトやイチゴは水耕栽培や屋内垂直農法で作られるため、味が一定で通年供給できるのが特徴。そうした貴重な食材を完全に使い切るための工夫にも余念がありません。「料理に使わないトマトの皮や種はバーでお出しするカクテルに変身します。フードロスをなくし、ゴミを一切出さないことが私たちの使命です」
ドバイの砂漠には〈シェイク・ムハマンド・ビン・ラーシッド・アール・マクトゥーム・ソーラーパーク〉という巨大なソーラーパネル・パークがあります。〈ボカ〉で使用する電力はすべて、そこから送電されているのだそう。「〈ボカ〉は100%再生可能エネルギーを使用しているという公式証明書を国から受けているんです」 アルコールを提供しないレストランも少なくないドバイの中で、〈ボカ〉のワインセラーの充実ぶりは白眉。セラーにあるワインの40%はスペイン産。60%はパレスチナ、シリア、レバノン、トルコ、アルメニア、グルジアといった近隣諸国のワインです。運送の際の二酸化炭素排出量を削減するために、極力近い国のワインを仕入れるようにしていると、シハブさん。ワインとともに美味しい食事を楽しめるレストランは、ドバイでは大変希少で貴重です。 気軽なランチ、食前酒を1杯、しっかりと味わうディナーなど、その時の気分に応じて使い分けられる〈ボカ〉。カジュアルで居心地の良い雰囲気の裏には、世界中から注目される徹底したサステナビリティの追求があります。