検証名目で判決を批判「明らかな事実誤認」 袴田さん再審無罪検証で最高検と静岡県警
最高検と静岡県警が26日、再審無罪が確定した袴田巌さん(88)の捜査や公判対応の検証結果を公表した。最高検は初動捜査や証拠保全について問題を認める一方、再審手続きの長期化に関しては大半の検察側の対応を「問題はない」と主張。判決が認定した証拠捏造(ねつぞう)も事実上否定するなど、検証の名の下に裁判所への不満を強くにじませた。 ■反論のオンパレード 「無罪の結論を否定するものではない」 最高検の報告書は冒頭にそう記したが、その後の主張は、捜査機関の証拠捏造を認定して無罪を言い渡した9月の静岡地裁判決への反論のオンパレードだった。 再審判決は発生から1年以上後に現場近くのみそタンクから見つかり、確定判決で犯行着衣とされた衣類を捏造と認定。根拠の1つとして、発見から次回公判まで約3カ月あったのに、発見後2週間足らずで検察側が証拠請求したのは「不自然」とした。 最高検は、実際は3カ月後ではなく、3週間後に次の公判が迫っており、「明らかな事実誤認がある」と指摘した。 さらに、判決で捏造が実行されたとした時期には県警が別のパジャマを犯行着衣とする前提で取り調べしていたことから、「明らかに矛盾している」と主張した。 捏造を明確に示す証拠も、捏造を明確に否定する証拠もなかったとした県警の報告書に比べ、判決への批判が際立った。 ■被害者への謝罪なし 再審手続きの長期化についても検察側の責任を繰り返し否定している。 最高裁で結論が出るまでに約27年がかかった第1次請求審では、審理の頻度が少なく、「積極的に審理を促進する方策が十分でなかった」と指摘。一義的な責任が裁判所にあったとの認識を示唆した。 一方で、警察側の初動捜査や証拠保全については一部で問題を認めた。 犯行着衣とされた衣類について、初動捜査の時点で「みその中も捜索すべきだった」と認定。捜索が遅かったことで、混乱を招いたとした。 事件では未成年2人を含む4人が殺害され、警察・検察の捜査は真犯人を明らかにできていない。報告書に被害者への謝罪はなかった。(桑波田仰太、久原昂也、星直人)