じつは、壁紙の模様は「数学的に分類」されていた…その数、なんと「たったの17」…貼り合わせでズレない「驚愕のパターン」
17類型の違い
「p」や「c」の次にいくつかの数字が現れますが、これは対称性をもつ回転の最大数(360度で元に戻るケースも含みます)を表します。たとえば「4」なら4回対称。つまり360度を4で割った90度ずつの回転をし、4回めで元の図に戻ります。 数字が現れないケースは、pやcの次の「1」、つまり「何もしない」が省かれているケースと考えてください。 「m」は「鏡映(mirror)」の略号なので、わかりやすいと思います。左右対称の図柄はもともと、鏡映軸で割った半分が基本セルとなっています。上下左右に対称的な図は、基本セルを縦と横に2回鏡映したものと考えてもらって結構です。つまり、鏡映軸は直交する2本あることになります。 「g」は「すべり鏡映(glide)」を表しますが、必ず鏡映体である点に注意が必要です。つまり、「すべり鏡映」というのは「鏡映にして(その鏡映軸に沿って)ずらす」ことを指します。mやgの組み合わせによって、鏡映像をさらに回転するケースも含むため、「g」は通常の「m」より複雑な概念です。 まとめると次のようになります。 p:基本セル/基本モチーフc:面心格子/ひし形格子*数字:回転対称で元に戻るまでの回数(「1」は省略されることが多い)m:鏡映g:すべり鏡映/裏返して(鏡映軸にそって)ずらすmm:鏡映したものを別方向にさらに鏡映/基本セルを4倍にするgg:2回のすべり鏡映mg:1方向の鏡映後、他方向にすべり鏡映 *厳密には適用できないケースがありますが、頭の中で理解するには「ひし形格子」を思い浮かべると便利です。 17類型の違いを示すために、数学者たちが例示した図柄(藤田伸、2015による)があります。参考までに次ページで例示しましょう。
面白い図柄との出会い
以下が、数学者たちが例示した17類型の違いを示す図柄の一部です。 なお、『ペンローズの幾何学』では、総数85に及ぶ図柄を紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。 みなさんも身のまわりで、これらに該当する図柄を探してみてはいかがでしょうか。きっと面白い出会いがあるはずですよ。 ここではこれ以上詳しく説明しませんが、フェドロフの17類型についてもっと知りたい人には、藤田伸『装飾パターンの法則─フェドロフ、エッシャー、ペンローズ』(三元社、2015)をお薦めしておきます。 本記事で取り上げたトピックをはじめ、『ペンローズの幾何学』では、平面図形に現れる対称性や黄金比などのふしぎな性質、最新の発見である「アインシュタイン・タイル(非周期モノ・タイル)」に関する詳しい解説等を紹介しています。 ペンローズの幾何学 対称性から黄金比、アインシュタイン・タイルまで
谷岡一郎、荒木 義明