東京五輪レスリングの開催国出場枠減少で困惑
2020年東京五輪へ向けての第一歩、8月にパリで開催されるレスリング世界選手権の代表選考会を兼ねた明治杯全日本選抜レスリング選手権大会が6月16~18日にわたって行われた。9日のICO臨時理事会では、東京五輪の出場選手枠がリオ五輪の344選手から56人削減され288選手になると決定された。噂すらなかった寝耳に水の決定を関係者と会うごとに話題にすると、もっとも強く関心を見せたのは五輪へ選手を送り出したい指導者たちだった。 「出場権利の奪い合いが厳しくなりそうですね」と複数のコーチが思案をめぐらしているようだった。というのもレスリングの場合、最近の五輪を振り返ると、開催国の出場枠が保証されていないからだ。 2012年ロンドン五輪では、前年の世界選手権から始まる3種類の五輪予選で338選手を選び、それ以外にフリースタイル、グレコローマン、女子の3スタイル合わせて6選手、全体で344選手に対し出場資格を与えることになっていた。予選後に追加される6選手は基本的に発展途上国むけのもので、開催国は出場資格を取れなかった場合に限り適用されるとされていた。発展途上国とは、戦争が終結したばかりのイラクやアフガニスタン、レスリングの普及がこれからのアフリカなどのことを指している。 続く2016年リオデジャネイロ五輪では、前年の世界選手権から始まる3種類の五輪予選で336の出場権利が確定したのち、特別枠に8選手、ロンドン五輪と同じあわせて344選手が選ばれる手順になっていた。開催国のブラジルが一階級も五輪出場権利を得られなかった場合に3スタイル合わせて最大4選手が選ばれ、残りは発展途上国を対象に選抜された。この方式だと、世界選手権で女子がメダルを連発する日本の場合、特別枠の対象にならない。 東京五輪も、五輪出場権利については似たような仕組みの採用が有力で、開催国だからと前提なしに出場権利が与えられることはなさそうだ。そのため、これまでの五輪と同様、世界としのぎを削りながら五輪出場をめざすことになる。 リオデジャネイロ五輪では、特別枠をのぞき一階級あたりフリーとグレコは19選手、女子は18選手が出場できたが、東京五輪では一階級あたり16選手になる。これまで以上に厳しい争いが予想されるが、選手でこの人数削減を気にしている人は少数派だ。 ロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪に出場し、今年の世界選手権代表にも選ばれたフリースタイル74kg級・高谷惣亮は「選手のあいだでは、そんなに話題になっていません。だって、勝てばいいんですよね?」と言う。 確かに、負けずに勝ち続ければ、狭くなった五輪出場の道は開ける。金メダル以外は敗者だと考えがちな、チャンピオン(世界一)を目指す競技の選手らしい考え方だ。とはいえ、ベテランらしい強かさも持つ高谷は「アジア予選の枠が小さくなったら、それは嫌かなあ」とも付け加えた。