東京五輪レスリングの開催国出場枠減少で困惑
現役選手とそのコーチ陣の関心は、どの階級にあわせて体を作りなおすのか、計量が2度行われるのであれば減量方法の変更が必要になるのか、などフィジカルな面にまず向かっている。まだ決まらないことばかりだが、階級と試合形式の変更についてのほうが、東京五輪の人数削減より頭の中を占めている。 五輪のレスリングは、まるで恒例行事のように五輪ごとに階級区分とルールの変更を繰り返している。競技経験者が多い米国やロシアのレスリング掲示板では、頻繁な変更によってレスリングがわかりづらく、退屈になってしまったと嘆く声が少なくない。しかし、いろいろ不満はあっても、いま戦っている選手とコーチは強くなる以外に選択肢がない。栄和人・日本協会強化本部長は「やるしかないんだよ」と明治杯ののちおこなわれた強化委員会終了後、語気を強めた。 「一階級16人しか選ばれないとなると、あとになって『以前のシステムだったら五輪に出られたのに』と思うこともあるかもしれない。でも今はやるしかない。全力を尽くして強化するだけ」 栄本部長自身、ソウル五輪を目指したが国内予選で敗れたとき、行き場のない思いに振り回された時間を過ごした。4年後にソウル五輪出場は果たしたものの、試合ですべてを尽くせなかったと悔いに苛まれる日々も送った。この後悔を教え子にはさせないという決意のもと、吉田沙保里や伊調馨ら何人もの金メダリストを育ててきた。強化本部長となったいま、その思いは日本代表すべてに向けられている。 2020年東京五輪へ向けて、日本レスリング協会はメダル数だけでなく「全階級出場」という目標も掲げている。五輪のメダルこそ1952年ヘルシンキ五輪から続いているものの、世界選手権優勝は1983年を最後に途絶え、崖っぷちを歩く状態が続いている男子フリーとグレコも、ピンチをチャンスに変えて復活できるか。 (文責・横森綾/フリーライター)