「ガンマGTP」が高いのは酒飲みの勲章⁉…じつはそれ、「命にかかわる病気」の前兆かもしれません
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第25回 『「3日前からの断酒」で数値が改善⁉肝機能検査で注目すべき「AST」と「ALT」について知っておくこと』より続く
中高年の自慢する「ガンマ」
肝機能の健診項目の1つに、γ-GTPがあります。中高年サラリーマンのあいだでは「ガンマ」と言うだけで通じるほど、お馴染みです。酒の席で、数値が高いひとがガンマ自慢を始めることもよくあり、尿酸値(痛風)と共に、中高年の病気自慢のネタになっています。 正式な名称は「γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ」と呼ばれる酵素で、肝臓の解毒作用に関わっています。アルコールの大量摂取で肝細胞が傷つくと、血液中に大量に溶けだしてきて、検査値(血中濃度)が上昇してきます。そのため飲酒量のバロメーターと目されているのです。 日本人間ドック学会の基準値は、表24のようになっています。
500越えは危険水域
表25に令和2年度(2020年度)の、東京都の特定健診の結果を載せました。 男性では60代前半まで、10人に1人かそれ以上のひとが、101を超えています。平均値で見ても、40代後半から60代前半までは要注意レベルです。 しかし70代に入ると、101を超えるひとの割合も平均値も、下がってきます。年齢とともに酒量が減るからだと思われます。 女性で101を超えるひとはわずかですし、平均値も50を大きく下回っています。それだけ女性の大酒飲みは少ないということでしょう。 ガンマ自慢のひとの中には、200以上とか、500を超えたという猛者たちがいますが、臨床的には500を超えると完全に危険水域です。すぐにでも治療を始めないと、後戻りできなくなるかもしれません。 しかし飲酒だけでなく、慢性肝炎や肝硬変、薬物による肝障害でも上昇してきます。1回のガンマ値だけでは原因を特定できませんが、断酒して下がれば、ほぼ間違いなく酒が原因です。 ガンマの半減期は約2週間と言われています。たとえばガンマが200だったとすると、2週間断酒すれば100前後に下がるはずです。もし下がらなかったら、別の原因が考えられるため、より詳しい検査が必要です。 逆に酒飲みのひとが健診前の1日や2日、禁酒したからといって、数値が良くなることはほとんど期待できません。 健診のせめて2週間前、できれば4週間前から禁酒に励むべきです。そうすれば基準範囲にかなり近づけることができるでしょう。ただしそれができるくらいなら、最初からガンマで引っかかることはなさそうです。高いと分かっていても、飲むのを我慢できない。それがガンマに対する酒飲みのジレンマです。
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)