「GAFA vs トヨタ」? バーチャルとリアルの戦いの実相
トヨタの「3つのリアルな競争力」
さて、ではトヨタ自身はそのリアルサイドをどう捉えているのだろうか? 豊田章男社長はトヨタが「リアルの世界」で培ってきた競争力を大きく分けて三つあると言う。決算説明会後の事業説明で語られた言葉からあらためて紹介しよう。 一つ目は「トヨタ生産方式(TPS)に基づくモノづくりの力」。その中心には「カイゼン」がある。常に「もっと良いやり方がある」と考え、「失敗をカイゼンの源」と捉えて行く。重層化して永遠に継続されていくカイゼンこそがイノベーションを生むとトヨタは考え、それを持続的成長の源泉とする。 そうでなければ、新車登録から10年、場合によっては20年大過なく安全に路上を走り回れる製品は作れない。クルマという耐久消費財を作る力。そしてそれを進化させて行く力はあくまでもリアルな世界が中心である。
二つ目は「ネットワークの力」だ。トヨタとレクサス、さらにレンタリース店も加えるとその店舗は日本国内で6000店舗。グローバルでは1万6000店舗に上る。商品にしてもサービスにしてもユーザーとの接点となる「ラストワンマイル」は極めて重要であり、そこが勝負を分ける局面は必ずある。
以下は筆者の想像だが、例えば自動運転のクルマはセンサーの塊だ。それらは当然、頻繁にキャリブレーション(較正)してやらなくてはならないはずだ。だがそのキャリブレーションはリアルな設備と技術者を必要とする。バーチャルでは不可能だろう。 あるいは、トヨタのモビリティサービス専用の自動運転電気自動車である「e-Palette」(イー・パレット)を使う商品販売のケースで、商品流通の基地はどうだろう? 大規模な企業ならAmazonのように自前で作れるかもしれないが、規模が小さいとそれを自前で作っていては採算が合わない。これをトヨタのディーラーがバックアップするようなビジネスは、小規模なMaaS事業を加速させて行く中で、おそらく重要な位置付けになってくるだろう。そしてそういう小規模なMaaSをいかにたくさん集めるかが、モビリティサービス・プラットフォーマーとしてのトヨタの将来を決めるだろう。