【フェラーリ プロサングエ】試乗ツアーで体感する、伝統と革新の技術が生む究極の走行
試乗ツアーの参加者は3人で1台のプロサングエに乗り、京都から松本を目指す旅(道中金沢で1泊)に出た。筆者が乗車したのは、深みのある艶やかな銀色のプロサングエ。初めて対面したとき、筋骨隆々とした毛並みの良い競走馬を彷彿させるシルエットに、思わず息をのんだ。インテリアも洗練の極みで、エアコンの吹き出し口にいたるまでスタイリッシュ。助手席にも液晶モニターがあしらわれ、運転席と左右対称になっているのが美しい。シートは環境にやさしく耐久性や耐熱性に優れた高級人工皮革「アルカンターラ」に包まれている。 篠突く雨のなか、ついに筆者がハンドルを握る番がやって来た。身長155cm足らず、愛車は中型でスポーツカーの運転経験は皆無である。そんな自分にこの大きくて超パワフルな車――静止状態からわずか3.3秒で時速100kmに到達する――を走らせることが(しかも土砂降りのなか)できるのか、はたしてその歓びを味わうことはできるのか……。
覚悟を決めてエンジンをスタートさせると、プロサングエは滑らかに動き出し、そのまま琵琶湖沿いの道を軽快に駆け抜けてくれた。小柄な筆者にとっても前方の視界は良好。緊張はすぐに吹き飛んで運転が楽しくなり、すべては杞憂に終わった。静かに走っていてもエンジンはフェラーリ独特の音を奏で、アクセルを踏み込むとクレッシェンドしていき、甲高い音へと変容する。 プロサングエは車両の全幅が2,028mm、全長が4,973mm、重量が2,033kgという大きな車だが、驚くほど反応が早くて鋭敏に動き、交差点もくるりとコンパクトに曲がった。安定感も抜群で、くねくねと続く道も高速道路のカーブも、巧みな制御によって難なく回ってくれた。そこにはフェラーリの最新技術があますことなく採用されているからだ。
たとえば、新たに開発された「フェラーリ・アクティブ・サスペンション・テクノロジー」。これによりボディとタイヤの動きが緻密に制御され、コーナリングの性能が最大限に引き出される。ほかにも四輪駆動に後輪操舵が組み合わされていたり、車体の動きを把握するのにダイナミックセンサーが活用されていたりする。 ドライビングモードを「アイス」に設定すればさらに制御が利いてステアリングが重くなるので、筆者のようなスポーツカー初心者は天候や路面の状態にかかわらず、最初のうちはこのモードや「ウェット」で走行すると、より安心感を覚える。 同乗者の御仁はふたりともフェラーリをご自身の手足のように操れるドライバーなので、マニュアルモードで跳ね馬を手懐け、山道のきついカーブでも高速道路のコーナーでもアグレッシブに駆る。しばしば、プロサングエの嘶きは「これぞフェラーリ」という最高潮の音域に達した。変速していくさまが助手席のモニターにもつぶさに表示され、自分も一緒に運転しているような気分を味わった。