住宅街近くの公園に出没する特定外来生物のキョン＝千葉県勝浦市（鴨川一也撮影）

住宅街に出没するシカや電線に止まる極彩色のインコ…。海外から来た「外来生物」が人の暮らしのそばで目撃されている。 【写真】市街地の電線にとまる外来種のワカケホンセイインコ。夜にはねぐらとなる気に数百話が集まり、騒音や糞が問題になったことも 土地固有の生態系に悪影響を及ぼすほか、農作物を食べ荒らし、生活インフラを傷つける被害も目立つ。行政は、目撃情報に報奨金を出すなどして拡大防止と駆除に取り組んでいる。 だが元をたどれば、人間がさまざまな都合で持ち込んだ生き物。思わぬ厄介者に変貌した彼らとの皮肉ないたちごっこはどこに向かうのだろうか。 （写真報道局　鴨川一也） ＜キョン＞ 「グワーッ」と大きな鳴き声が静かな住宅街に響く。本来は中国などに生きるシカの一種キョンが千葉県の房総半島で生息域を広げている。その数は推定で7万頭以上。年間の農作物被害額は約200万円に上り、生態系などに被害を及ぼす「特定外来生物」に指定されている。中型犬ほどの大きさで、人を恐れない群れにも出会った。駆除にあたる狩猟関係者は「人家近くでは猟銃も使えず思うように駆除が進まない」と吐露する。 ＜ワカケホンセイインコ＞ 電線から飛び立つワカケホンセイインコ。日没直前にはねぐらの木に次々集まり、数百羽の群れをつくった。辺りには鳴き声が響き渡り、木の下には大量の糞（　ふん　）が落ちていた。本来はインドなどに生息しているが、ペットが野生化したとみられている。 ＜クリハラリス＞ 寺社が立ち並ぶ神奈川・鎌倉をクリハラリスが走り回る。台湾などに生息するが動物園などから逃げ出し増えたらしい。つぶらな瞳にふさふさの尻尾で、観光客には人気だが、迷惑な一面も。電話線や街路樹の樹皮をかじって傷つけてしまう。 ＜カミツキガメ＞ 鋭い爪に、強いアゴ。アメリカ大陸原産のカミツキガメ。水田のあぜに穴をあけたり、漁具の網を破ったりして被害を及ぼす。千葉県はカメの生態に詳しい専門職員を雇い、駆除にあたっている。