商談では重いペンを用意すべき? プレゼンを成功に導く「心理学的テクニック」
聞き手の集中力を欠く意外な落とし穴
話の価値は聞き手が決めます。相手から見てどう見えるか、どう感じられるか。相手目線を事前に確認することが重要です。 どんなに準備をしても、聞き手がいまひとつこちらに注目してくれない......。そんなとき、実は環境の準備が不十分な可能性があります。 話す前に一度相手の位置に座ってみましょう。話に集中できない環境要因が見つかるかもしれません。せっかくあなたが上手に話をしていても、環境が邪魔していてはもったいない。確認していただきたいのは「パーソナルスペース」と「ノイズ」です。
パーソナルスペースに配慮する
パーソナルスペースとは、私たち誰もが持っている「その中に他者が入ると心的不快を生じさせる空間」のことです。 大事なのは、聞き手を居心地の悪い状態にしないこと。パーソナルスペースを侵略した状態で座らせてしまうと、あなたの話に集中できないばかりか話自体の印象も悪くなってしまいます。相手がストレスなく話に集中して聞いてくれるような空間を作ることを心がけましょう。 パーソナルスペースは、アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールが提唱した空間の分類を目安にしています。ホールはパーソナルスペースを親密距離、個体距離、社会距離、公衆距離の4つに分けました。 1. 親密距離:45cm以内 相手の匂いや体温が感じられる距離。家族や恋人、親しい友人などごく親しい人に許される空間。 2.個体距離:45~120cm 知人・友人などとの通常の会話の距離。 3.社会距離:120~360cm 公式な商談で用いられる距離。 4.公衆距離:360cm以上 講演やプレゼンで大勢を前にして緊張せずに一方的な働きかけができる距離。 一般的にオフィスや会議室などで椅子を設置するとき、席と席の距離の目安は60~80cmあれば十分とされています。これは知人・友人などとの通常の会話に適した「個体距離」にあたります。話し手と聞き手がそれほど親しくない場合は、最初から設置されている椅子を減らすなどして公式な商談で用いられる距離である120~360cmの「社会距離」に変更することをお勧めします。 さらに、コロナ禍を経てパーソナルスペースは拡大しています。あなたも心当たりがあるかもしれません。感染症の拡散を防ぐために、世界中で「ソーシャルディスタンス」という手段を推奨した影響でしょう。 2021年に日本で報告された研究によると、コロナ前のパーソナルスペースが個体距離(45~120cm)だったのに対し、コロナの発生により社会距離(120~360cm)に変化したとされています。 この研究では、とくに滞留空間となるバス停や横断歩道付近の待機場所での不快感が強く出ていたことを指摘しています。滞留空間、つまり長く留まる場所という観点では、会議室やプレゼン会場も同じです。相手が知人・友人などであっても、120~360cmの社会距離を取れる場所を用意しましょう。 また、カフェなど外の場所で話をするときも配慮が必要です。混んでいる場所や時間帯は避け、パーソナルスペースを確保できる環境のときに話を切り出すほうが、あなたの話す目的をサポートしてくれるでしょう。