斬新!あえて二世帯の建物を近接させた若手建築家の自邸。その理由とは?注目クリエイターの住宅紹介&インタビュー
キーワードは「他者性」。関わり合いから生まれる豊かさと広がり
畝森さんがこのような自邸をつくった背景には、建築には自然をはじめとする自分以外の「他者」との関わりが重要だという考えがあるから。 原風景は、生まれ育った自然豊かな岡山での暮らしにあると話します。 「里山には過ぎ去っていく時間ではなく、季節が巡り円環するような時間感覚がありました。その影響もあって、自然を見る対象ではなく、どう自然の流れの一部となって暮らすかを意識するようになりました」
独立後、最初に手掛けたのは4m四方、5階建ての狭小住宅。オーナーは寒い日は上の階で、暑い日は下のほうの階で過ごしていました。 それを見て、「このわずかな高低差のなかにも環境の変化があるのか」と気付いたといいます。 その後に設計した「須賀川市民交流センター」では、組織設計事務所と協働し、複数の人と共に考えることのおもしろさを知るきっかけに。 「いろんな人たちとの対話を大事にするようにしています。そのほうが自分の想像をはるかに超えるものができる。 建築は大きいから一人ではできないし、全部把握できないので、常に想像しながら現実を見ていなければいけない。それが建築のおもしろさであり、醍醐味だと思います」
これからの建築は、住宅も公共施設もハード(建物)だけでなく、形にならないソフト(活動や暮らしなど)も含めて考える必要があると語ります。 事務所の1階はその実験の場でもあります。 古いビル1棟を他の事務所とシェアし、1階は街に開かれた多目的スペースに。ワークショップを開いたり、近所のお祭りの際には集会所として場所を提供。 ここでの活動を通して、運営や維持の方法など実感を伴った提案ができるようにしていきたいといいます。 「空き家問題などが取り沙汰されるなか、今建築をつくる意味とは何かをよく考えます。仕組みや場づくりも建築家の仕事と捉えるなら、可能性は広がるのではないでしょうか。広い視点と長い目で見て、建築をつくっていきたいです」。