斬新!あえて二世帯の建物を近接させた若手建築家の自邸。その理由とは?注目クリエイターの住宅紹介&インタビュー
新建築賞、グッドデザイン賞、JIA優秀建築賞、日本建築学会作品選奨、BCS賞…。 数多くの受賞歴をもち、次世代のホープとして期待される建築家が畝森泰行さんです。 【写真で見る】路地を挟んで並ぶ、凸凹の立体的な建物。ユニークなプランの意図とメリットとは 畝森さんが他の建築家の先を行く理由、その1つに、自然は眺めるだけの対象ではなく、建築そのものも循環する自然の一部であるという考えがあります。それは、生まれ育った緑豊かな里山での経験が大きいのだそう。 狭小住宅から公共建築まで幅広く手掛け、これからの建築には建物だけでなく、なかで行われる人の活動や暮らしも含めて設計することが重要だと語ります。 自然や人などの「他者性」を共存させることが設計の鍵。 自宅はまさに、建築が「他者性」をポジティブに媒介するような、彼の意図がリアリティをもって追求されていました。
縦長の建物が寄り添うように並ぶ、畝森さんの自邸
住宅街の角地に、細長い2棟の建物が路地を挟んで並んで立っています。高さの異なる箱が立体的に積み上げられ、植物が植えられた路地を歩くと、まるで小さな街のよう。一方の建物は建築家の畝森さんの自邸、もう一方には義理の妹家族が住んでいます。 「子供が同じくらいの歳ですし、近くで暮らすほうがよりよいんじゃないかと思い、一緒に敷地を探そうと僕から声を掛けたんです」と畝森さん。 日本の法律では1つの敷地に対して建てられるのは1つの建物になるため、敷地を分割しなければなりません。 当初、約200㎡の長方形の敷地を横に割ることを考えましたが、それでは単純に家が隣り合うだけになってしまいます。 そこで縦に分割することで、2棟が接する長さを増やす計画に。細長い建物を2つ並べて、間に共有し合う路地を設けることにしました。
立体的なプランによって、人や自然とうまく共存する
どちらの家も平面的にはシンプルですが、断面を見ると立体的なプランになっていることがわかります。 程よい距離感とプライバシーを考慮して、建物の窓の大きさや位置、床や天井の高さに変化を付けることで、互いの視線がずれるように工夫。 地下に潜ると路地の緑が近くに感じられ、ハイサイドからは空だけが見えるなど、立体的な空間を通して身近な自然をさまざまな角度から感じられるようになっています。