脱管理型で「学校主役」の教育行政に転換、高橋洋平・鎌倉市教育長の手腕 子どもと先生を助け、支え、励ます伴走型の教委
独自ファンドで「社会に開かれた教育課程」を
――2020年度から推進してきた「鎌倉スクールコラボファンド」が注目を集めています。 「鎌倉スクールコラボファンド」は、社会に開かれた教育課程を実現するため、ふるさと納税の仕組みを活用して教育委員会の下に設立したガバメントクラウドファンディングで、個人や企業から募った寄付を子どもたちの学びに活用しています。 未来を生きる子どもたちのためには、未来につながる学びを創りたいと思っており、学校からも企業や大学などとコラボしてSDGsに関するプロジェクト型学習をやりたい、生成AIを活用した学びをやってみたいといったアイデアがあがってきます。しかし、こうした「社会に開かれた教育課程」を実装するうえで、学校外とコラボレーションするための予算を、その都度公費で確保して、教職員が自前でコーディネートすることは大変です。 人件費・設備など学校教育の基盤となる経費は、建物でたとえると「1階部分」であり、公の財政で教育の機会均等をしっかり確保する必要があると考えます。一方で、寄付をはじめとする民間資金は「2階部分」に活用し、学校や子どもたちから湧き上がってくる問いや願いを起点にして、教育委員会が学校と企業などをマッチングし、魅力的な教育活動を展開するための経費に充てるというポートフォリオを組んでいます。 ――これまでに、「鎌倉スクールコラボファンド」でどのようなプロジェクト型学習が実現したのでしょうか。課題や今後の展望は? 2023年度は、約500万円を活用し、小・中14校で19のプロジェクト型学習を実施しました。映画監督と学ぶ映像制作ワークショップ、盲導犬団体やパラスポーツ団体とコラボした福祉の総合学習、教材会社とのコラボによるプラスチックのアップサイクルの学習など、企業やNPO、大学などと広く連携しながら子どもたちも教職員もワクワクするような教育活動が生まれました。 ある小学校では、6年生の総合学習で、1年間を通して「私たちのワクワクモヤモヤ探究」をテーマにグループや個人でプロジェクト型学習を行いました。あるグループは、学校でシャープペンシルの使用が禁止されていることにモヤモヤを感じ、児童へのアンケートや、さまざまな職業人との対話を重ねたうえで、「シャープペンシルは鉛筆よりもコストパフォーマンスや利便性、学習効果が高い」という結論にして、教職員や後輩たちに説得力あるプレゼンをしました。自分たちが動くことで社会は変わることを実感できたと思います。 一方で、「鎌倉スクールコラボファンド」スタート当初は寄付が集まりやすかったのですが、時がたつにつれて集めにくくなってきている現状もあります。持続可能な仕組みにしていくために、市内に売り上げの一部が寄付されるタイプの自動販売機の設置を進めているのに加え、今後は有価証券の運用益を使った寄付、遺贈寄付などの可能性を検討しながら、収益面でも進化させていきたいです。