脱管理型で「学校主役」の教育行政に転換、高橋洋平・鎌倉市教育長の手腕 子どもと先生を助け、支え、励ます伴走型の教委
現場を助け、支え、励ます「伴走型の教育委員会」
――教育委員会や教育行政のあり方も、発想の転換が必要な時期にきているのでしょうか。 そうですね。教育行政は、文科省→都道府県教育委員会→市町村教育委員会→学校管理職→教職員→児童生徒というピラミッド型のガバナンスであるとともに、権限と責任が分散された重層的な構造ともいわれています。 鎌倉市は、「伴走型の教育委員会」という新しい教育行政のモデルを目指しています。子どもたちは、生まれながらにして優秀な学び手であり、それをいかに引き出していくかがわれわれの仕事です。 打ち上げ花火ではなくじわじわ燃え続ける「炭火」のように、生涯にわたって「自ら学び続ける学習者」を育てるというのが、鎌倉市で議論しているビジョンです。子どもたちのワクワクやモヤモヤから生まれる問いや挑戦を、先生たちが助け支え励まし、子どもの学びを引き出していく。その先生たちをさらに助け支え励まし、下支えするのは校長であり、教育委員会である、という考え方です。 ピラミッド型・管理的リーダーシップから伴走型・サーバントリーダーシップを推進することで、教育行政の質の向上と学校教育の活性化、持続可能性の向上を目指します。もちろん危機管理や人事などでは管理的な対応もあるわけですが、伴走型の教育委員会像は鎌倉市に限らず、教育行政がこれから目指していくモデルだと思っています。 ――「伴走型の教育委員会」として、市内の学校とどのように関わっているのでしょうか。 例えば、定期的に月に1回、教育長室に教育委員会の幹部職員、指導主事・教育行政職、教育に関わる外部団体などのメンバーが集まり、市内にある25の小中学校各校のケースを語る「戦略会議」を行っています。 同じ市内で隣り合っている学校であっても、その特徴や課題、悩みなどは異なります。それぞれの立場で学校訪問したり研修したりしているわけですが、各自が学校について見えている視点を持ち寄り、それぞれの学校をどう支え、どう助けるか戦略を練り、それぞれの学校ごとに必要な個別伴走に生かしています。 教育委員会として各学校の「個別最適」な支援を考え学校や教職員のチャレンジを価値付けし、一律にではなく、各学校が異なるアプローチで輝ける場になっていくことが重要であると考えています。さらに、働き方改革、授業や評価の改善など、各学校の挑戦を個別に支援し、それぞれの学校が「自ら学び続け、変わり続ける組織」になっていくことを目指しています。