大失速でBクラスとなった広島 コーチ全員が来季も残留に「危機感が見られない」の声
■「同じ相手にやられるのはコーチにも責任がある」 苦手としている投手の対策にも課題が残った。阪神の大竹耕太郎は昨季広島戦に6勝0敗、防御率0.57をマークし“コイキラー”と呼ばれ、今年も3勝1敗、防御率2.08とキラーぶりを発揮した。DeNAの東克樹も昨季は広島戦で4勝0敗、防御率1.84をあげ、今年も4勝2敗、防御率1.91と抑えていた。 「何度も同じ相手にやられるというのは、選手個々の能力の問題だけではなく、コーチ陣にも責任があると思います。広島は高橋慶彦さん、正田耕三さんとコーチ経験が豊富なOBがいるので登用しても良いと思うのですが……。指導者の経験はないですが、前田智徳さんもバックネット裏から広島の野球を見続けている。チームを活性化する意味でも、打撃コーチは重要なポジションです。今年の成績を踏まえて、入れ替えが全くないのは危機感が見られないと解釈されても仕方ない」(広島のテレビ関係者) 広島にはかつて、鈴木誠也(現カブス)、菊池涼介、丸佳浩(現巨人)を主力として一本立ちさせたコーチがいた。現在DeNAで野手コーチを務める石井琢朗コーチだ。横浜(現DeNA)の主力選手として長年活躍した後、広島で4年間プレーした。引退後は広島で内野守備走塁コーチを務め、16、17年は打撃コーチとしてリーグ優勝に貢献した。当時広島を取材していたスポーツ紙記者が、石井コーチの指導を振り返る。 「個々がやるべきことを明確に伝えるので、選手が迷わない。質だけでなく、練習量も凄かったです。あと、試合で凡打の質にこだわっていたことも印象的でした。相手バッテリーが抑えにくる中で、気持ちよく打てる打席は少ない。アウトになっても走者を進める打撃ができれば得点の可能性が上がる。あの時の広島は劣勢の展開でも、ビックイニングで試合をひっくり返す破壊力がありました」
■強打者育成が課せられた打撃コーチ陣 結果を残せなければ、コーチ陣に向けられる風当たりも強くなる。朝山東洋1軍打撃コーチは広島一筋でコーチ歴20年の実績を誇る。現役時代に152試合出場で打率.219、8本塁打と目立った成績を残せなかったが、引退後は3軍、2軍のコーチを歴任し、来季は1軍打撃コーチで6年目を迎える。 「走攻守3拍子揃ったセンス抜群の選手でしたが、ケガに泣かされました。コーチに転身後は打撃フォームのズレを修正する能力に長け、熱心な指導で知られます。新井監督とは同学年で、信頼が厚い。今年はなかなか得点が取れなかったので、責任を感じているでしょう。小園海斗、矢野雅哉とチャンスメークする選手は順調に育っているので、クリーンアップを担う強打者をどう育成するか。小窪哲也1軍打撃コーチ、福地寿樹2軍ヘッド兼打撃・走塁コーチ、新井良太2軍打撃コーチと共に課せられた大きなテーマです」 外部補強に頼らない広島は、育成力が生命線だ。田村俊介、佐藤啓介、林晃汰ら若手の成長株が殻を破り、定位置をつかめるか。サポートするコーチ陣の責任は重い。1、2軍のコーチが全員残留という決断が正しいことを証明するためには、結果で証明するしかない。 (今川秀悟)
今川秀悟