TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』最終回スペシャルオープニングムービーより

　近年の日本のポップミュージックシーンの潮流として、ヒットチャートを席巻するアーティストたちがアニメの主題歌を手掛けるケースが増えている。多様なアニメ主題歌が存在しているが、そのなかでも今回注目したいのが「ロックバンド×アニメソング」の組み合わせである。たとえば、2024年は『忘却バッテリー』（テレビ東京系）のオープニングテーマとしてMrs. GREEN APPLEの「ライラック」が、エンディングテーマとしてマカロニえんぴつの「忘レナ唄」が起用され、その他にも、Official髭男dism「Same Blue」が『アオのハコ』（TBS系）オープニング主題歌に、MY FIRST STORY × HYDE「夢幻」が『「鬼滅の刃」柱稽古編』（フジテレビ系）オープニング主題歌に起用されるなど、ロックバンドが手掛けたアニソンが大きなヒットを記録するケースが非常に多かった。 【画像】DISH// 北村匠海、KAT-TUN 中丸雄一とツーショット　『中丸銀河ちゃんねる』共演 　この流れは決して今に始まったものではなく、2000年代、2010年代から脈々と続いているものであり、たとえばASIAN KUNG-FU GENERATIONやSPYAIR、KANA-BOONのように、アニメ作品との幸福な関係性を築きながら、海外進出を含めた大きな飛躍を遂げていったロックバンドも多い。本稿では、2024年を振り返りながら、ロックバンドが書き下ろしたアニメタイアップ曲を紹介していく。 　最初に取り上げたいのが、『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』（テレビ東京系）のオープニングテーマに起用されたSIX LOUNGEの「言葉にせずとも」。『BLEACH』と言えば、2023年にw.o.d.の「STARS」がオープニングテーマに起用されたことが象徴的なように、ライブハウスを主戦場とするロックバンドたちと熱い信頼関係を結び続けている作品でもある。今回、その流れでSIX LOUNGEが抜擢されたことに深い納得感を抱いた人は多かったのではないだろうか。彼らは、2023年に『僕のヒーローアカデミア』6期第2クール（読売テレビ／日本テレビ系）のエンディングテーマとして「キタカゼ」を提供し、それがバンドにとって初のアニメタイアップとなった。 　そして今回、彼らにとって二度目のアニメタイアップが実現。今回のコラボレーションにあたって、SIX LOUNGEは、「俺たちを選んでくれてありがとうございます。長年に渡り愛されてきた『BLEACH』という作品に、俺たちが信じ続けてきたロックンロールで真正面から向き合い、愛とリスペクトを込めて楽曲を制作しました。全力です。」（※1）とコメント寄せている。最後の「全力です。」という一文がとても彼ららしいが、改めて振り返ってみても、SIX LOUNGEが長年にわたり大切にし続けているロックバンドとしての熱い信念や矜持がまったく薄まることなくアニメタイアップ曲へと結実している、とても素晴らしいコラボレーションだと思う。 　次に、『逃げ上手の若君』（TOKYO MX／BS11ほか）のオープニングテーマとして書き下ろされたDISH//の「プランA」について。これまで多様なタイアップソングを手掛けてきたDISH//だが、今回の楽曲について注目すべきは、クレジットが「作詞：北村匠海／作曲：DISH//」となっている点。遡ると、2023年にリリースされたアルバム『TRIANGLE』は、全12曲中11曲の制作にメンバー自身が携わり、これまで懸命に磨き上げてきた演奏技術、ソングライティング技術が美しい結実を見せた作品だった。彼らにとっての大きな転換点となった『TRIANGLE』を経てリリースされた楽曲を通して、各メンバーの作詞曲の経験がさらに積み重ねられ、2024年7月リリースの「プランA」を「DISH//」として作曲したことからも、4人が密に肩を組み合いながら楽曲を制作していったプロセスが想像できる。 　特に近年、“ロックバンド”としての著しい成長を見せる彼らが手掛けた楽曲が、こうしてアニメのオープニングテーマに起用されたことは、きっと4人にとって大きな自信に繋がったはず。この曲の中で大々的にフィーチャーされている和のテイストは、『逃げ上手の若君』の世界にぴたりと寄り添うもので、作品との親和性も見事。タイアップを契機として、自分たち自身の音楽性を広げようとする軽やかな自由さも感じられる。