大統領選トランプ圧勝の「知られざる」理由、ハリス“民主党”の「根本的欠陥」とは
ワシントンを変える物語の行き先は
つまりこの選挙は、トランプ対ハリスというより、対民主党エリート、対ワシントンの「龍退治(ドラゴンクエスト)」の物語だった。目標に向かって艱難(かんなん)辛苦を乗り越える情熱的探究、善良な市民に代わって巨悪を倒すことを諦めない強いファイターの物語。トランプの暗殺未遂は「神からの使命」を果たすためと見る人さえいる。トランプに賭けるリスクはある。だがハリスの“現状維持”よりはましだ。国が良くなるか悪くなるかは意見が分かれ、トランプの極右は嫌だけれど、「受け入れがたい現在」の重荷と政府の統治能力への失望(世論分析家R.ブラウンステイン)が上回る。 トランプは、闘うための武器や仲間作りを着々と進める。共和党のトランプ党化と「トリプルレッド」、忠誠的側近の閣僚人事、良くも悪くも最大のメディア露出、そしてMAGA基盤支持層に加えて、今選挙で獲得した世論の信認だ。 トランプの目指す「レガシー」、すなわちトランプ大統領ブランドの歴史的意義は何か。政敵をけちらす絶対行政権力か。それとも権力は武器にすぎず、納税者の“復讐(ふくしゅう)”の代弁者として歴史に名を残すことなのか。時間は最長4年、実際には2026年中間選挙までの2年で成果が必要だ。トランプは勝ったが、個々の政策案について世論が必ずしも全面的に賛成しているわけではなく、「総論賛成、各論反対」の分裂や矛盾を示す。超速で進む政権交代。人々の賭けの結果を見守りたい。
執筆:埼玉大学名誉教授 政治学博士 平林 紀子