大統領選トランプ圧勝の「知られざる」理由、ハリス“民主党”の「根本的欠陥」とは
トランプの決定的な2つの魅力と大衆的文化の広報戦略
「人」を選ぶ決め手は、知名度や人気・好感度よりも、人間性や哲学、政策などで「ほかとは違う」特色と、有権者にとって「距離が近い」「深い関連性がある」など “自分事”になるというのは、前回の本連載でも触れたとおりだ。 トランプは岩盤支持層を中心に根強いファンがいる。特に、米国を本来の在り方から逸脱させる既成勢力や内外の“敵”と闘い続ける「強い指導者」像は、男性支持層が共感と一体感を持つ。 実際、7月の暗殺未遂事件直後に拳を振り上げ、強さと健在を誇示する姿に支持が急増した。庶民の不満や不安、憎しみをあおり代弁すれば、共感を呼ぶことをトランプは熟知している。ポッドキャスターのジョー・ローガンやプロレス界レジェンドのハルク・ホーガンなど、マッチョニズムを売る男性人気インフルエンサーを使い、支持層の“身の丈”に合った大衆的文化の広報戦略も効果的だった。 トランプの極端な言動やうそ、独裁志向などの欠点も、NYタイムズ調査によると、支持者は「ポーズ」だと受け流す。「民主主義の敵」は、既知事項で誰もいまさら問題にしない。彼は清濁両面ともに、常にメディアに登場し続ける。その遍在性と人々の慣れが、欠点を“無化”してしまったのだ。 トランプは、人によって好き嫌いが極端に分かれるが、常に気になる“悪ガキおやじ”だ。ハリスは対照的に、“優等生”すぎて支持層とさえ距離がある。トランプと対照的に、約20歳若い有色人種の女性、地方検事出身(トランプは議会襲撃事件などの被告)、左派、人工妊娠中絶容認など女性の権利擁護で知られる。 その反面、当意即妙のやり取りが下手でぎこちなく、メディアを敬遠して素顔をさらさないので、有権者が経験や感情を共有し自分事と見ない。最終盤は、草の根縦断という非効率なやり方で知名度浸透を狙ったが、共感を得られないまま途中で時間切れになった。 トランプ嫌いの穏健派や無党派層でも、政策面でのトランプの政権業績は「景気も良く、戦争もなかった」時代を想起させ、広く支持される理由となった。今回のトランプのコンセプトは「平和と繁栄」、日本の自民党長期政権と同じだ。この8年間、共和党は極右から元民主支持層のブルーカラーポピュリストまで広範な層を抱き込む「トランプ党」化した。もはやトランプは米国政治の「異端」ではない。「スタンダード(標準)」なのだ。しかも党を掌握し、人事や政策実現の政治力を持つ。 王道化するトランプの立ち位置に対し、ハリスは自らを中道左派に位置づけようとしたが、トランプ陣営がハリスを「隠れ極左」に見せる広告を全面展開し成功したことで、うまくいかなかった。