中国「無差別襲撃」の背景に“詰む人”多発の悪循環 「人生を再建しにくい制度」が人の心を追い詰める
中国・深圳(しんせん)で9月、日本人学校に通う10歳の男児が刃物を持った男に襲われて死亡した。日本でも大きな話題となったが、中国ルポライターの安田峰俊氏は「中国で(日本人に限らず)いろんな人に対する無差別殺人的な事件がかなり起きている」点を指摘。こうした事件の背景にある社会情勢について、安田氏に聞いた。 ※記事の内容は東洋経済の解説動画「【中国の無差別事件】多発する背景に何が?」から一部を抜粋したものです。動画については外部配信先では視聴できない場合があります。その場合は東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。 【動画を見る】中国の無差別事件 多発する背景に何が?/監視体制を整えても防げない/転落した人が再チャレンジしにくい「失信人」制度/スパイ容疑「邦人拘束」のリスク/事態鎮静化への道筋は
劉彦甫(以下、劉):深圳で9月、日本人学校に通う10歳の男の子が刃物を持った男に襲われて死亡してしまう事件がありました。日本でも大きな話題となりましたが、安田さんはこの件について、中国の社会情勢など背景をどうみていますか? 安田峰俊(以下、安田):こうした事件が起きる原因について、私はいつも、大体3つくらいの要素があるだろうと説明しています。 1つは、いわゆる「反日感情」。長らく愛国心教育というものが中国に存在してきて、もともと反日感情がある程度高いということです。次に挙げたいのは、2010年代半ばから中国でブームになっている「ショート動画」です。バズを稼ぐために愛国的なコンテンツ、デマ混じりのコンテンツを投稿する動きが広がり、こちらも大きな要因だろうと考えられます。
ただもう1つ指摘したいのは、中国社会では目下、(日本人に限らず)いろんな人に対する無差別殺人的な事件がかなり起きていて、実は深圳の事件も、こちらに位置づけられる部分があると思っています。 社会のあちこちで同じような事件が起きていて、その中でたまたまとまでは言いませんが、日本人がターゲットになる事件も起きている、という理解が正しいのではないかと。なので、そうした状況を根本的に消し去るには、なかなか大きな手術がいるだろうと思います。