火山のリスクヘッジ! 2014年御嶽山の噴火現場から命からがら生還した登山者の証言とは
とっさに取った命を守る行動とは?
「立ち止まって噴煙を見ていたのは一瞬です。急激に上がってくる噴煙を見れば、理屈抜きに危険が迫っていて、1秒のロスも許されない危険な状況であることはわかりました。 空に投げ出された黒い粒は噴石で、いずれ落ちて来る。とっさに、登山道脇にあった岩陰に身を寄せました。けれど、その岩はあまりに小さかったので、5、6m先にあるもう少し大きい岩に移動して、ぴたりと張り付いて頭を守る姿勢に。 その瞬間、視界を遮る強烈な腐卵臭のするガスに巻かれたんです。吸わないように我慢したけれど、苦しくて苦しくて吸い込んでしまい、火山ガスなので吸えば吸うだけ苦しくなっていく。もうダメだ、と思った瞬間、風向きが変わったのか、ガスの臭いはしていたけれど、なんとか息が吸えるようになりました。この間1分くらいでしょうか。もっと長かったら死んでいたでしょう。隣にいた男性はガスを吸ったせいか、何度も吐いていました。」(小川さん)
ついに降り始めた噴石
「噴煙を見てから2分弱ほどでしょうか、ついに噴石が降り始めたのです。噴石が山肌にぶつかって砕ける音、焦げ臭いにおい…… 心もとない岩に張り付いたまま、祈ることしかできませんでした。 しばらくすると、冷たく新鮮な空気が流れてきました。噴石も止んで、視界が戻りました。身を守れる岩を探すため、一ノ池方面への急斜面を駆け下りました。大きな岩の下に不自然に空いた穴を見つけて、頭を突っ込みました。けれど、大きな穴ではなかったので、頭と左足、背中の半分くらいまでしか隠れることができませんでした。 すぐに2回目の爆発が起き、噴石が雨のように降ってきて、隠れていない右足にバチバチとあたり、右足はもうダメかもしれない、と思いました。 その後小さな石の粒がザンザン降りはじめ、あっという間にしゃがんでいる腰まで埋まりました。それを手でかき集めて、岩に隠れきれていない右足と腰を覆い、噴石に備えました。生き延びるためにできることは、どんな些細なことでもやろうと思ったんです」(小川さん)