「スノーボールアース」の引き金は小惑星の衝突だった、アッと驚く新説が登場
地球が凍結した6億年以上前の出来事、「彼らのモデルには説得力があります」
もし何億年も前の時代にタイムトラベルしたなら、地球はまるで映画『スター・ウォーズ』に出てくる惑星ホスのような姿をしていることだろう。凍りつくように寒く、陸地と海をほぼ隙間なく覆う果てしない氷の世界を、乾いた空気が吹き抜けていくのだ。 ギャラリー:この世の果て? 地獄のような絶景写真12点 「スノーボールアース」として知られるこうした全地球規模の凍結状態は、少なくとも2回、どちらも6億年以上前に発生している。世界が巨大な氷の球に変わってしまうなど、何か重大な問題が起こっていたに違いない。しかしその問題とは、一体なんだろうか? 異常な火山活動から超大陸の破壊までさまざまな仮説が唱えられてきたが、2月9日付けの学術誌「Science Advances」に発表された研究は、これまでほぼ無視されてきた新たな可能性について検証している。小惑星の衝突だ。 大きな小惑星が高速で地球に衝突すると、大量の岩石が空に向かって噴き飛ばされる。この噴出物の多くは硫黄を含む鉱物であり、成層圏(大気の最下層より一つ上の層)において日光を反射するエアロゾルとなる。成層圏に十分な量のエアロゾルがあると、地球はまたたく間に寒冷化する。 今回の研究において科学者らは、成層圏に硫酸塩エアロゾルをさまざまな濃度で注入するシミュレーションを行った。巨大な小惑星の衝突によって発生すると考えられるエアロゾルの状態を、地球がうだるほど暑かった時期から、かなり寒冷になった時期まで、過去のさまざまな地球で検証したのだ。 その結果判明したのは、暖かい時期には凍りつくことなく小惑星の衝撃に耐えられる一方、すでに気候が寒冷になっている場合は、地球外からの一撃によってスノーボール状態に追い込まれる可能性がある、ということだった。 現在のところ、これが実際に起こったことを示す地質学的証拠は存在しない。しかしこの研究は、小惑星の衝突がスノーボールアースの原因となった可能性を認識すべきであることを示している。「とても興味深い思考実験と言えます」。英サウサンプトン大学の地球科学者トーマス・ガーノン氏はそう述べている。 この研究はまた、現在開発が進められている、小惑星の衝突を防ぐ地球防衛システムの有用性も実感させてくれる。 「大きな衝撃に続いて地球全体が氷に覆われれば、複雑な生命に壊滅的な影響を及ぼし、人類の絶滅を引き起こす可能性があります」と、論文の筆頭著者である米エール大学の気候力学者ミンミン・フー氏は言う。