「長い文章や感想文が書けない」子どもになる原因とは? 自分の思いを“言語化する”ための5ステップを専門家が解説(レビュー)
「子どもが長い文章を書けない」「感想文も、ありきたりな言葉で字数を埋めるだけで、自分の気持ちを書けていない」……そのような悩みを抱える親御さんは多いのではないでしょうか。 これは子どもたちだけの問題ではなく、実は私たち大人の多くも「自分の気持ちを言語化する技術」を学ばないまま成長しているという現状があります。 そんな今、『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(三宅香帆・著)が話題です。「すごく感動したのに、“面白かった”しか言葉が出てこない」という悩みを起点に、「言語化する技術」が語られている一冊です。 「教育デザインラボ」代表で36年以上にわたり子供たちの教育に携わってきた石田勝紀氏は、この本を読み、国語教育における「作文と感想文」に大きな問題があると感じたといいます。 なぜ、子ども達は伝えたいことを言語化できないのでしょうか? また、石田氏が実際に指導している“言語化”のための5ステップとは? 同書の読みどころとあわせて、語っていただきました。 *** 『「好き」を言語化する技術』の書評を依頼されたとき、はじめに注目した言葉は、副題の「推し」という言葉でした。なぜなら、私には「推し」がいないからです。 近年、よく使われる「推し」という言葉とは無縁の私にとって、特に「推しの素晴らしさ」を語りたい機会もないので、果たして書評が書けるのかと思いつつ、読み進めていくと、読みやすい文体と興味深い内容に次々と惹き込まれていきました。 というのも、本書は自分の気持ちを伝えることを主眼に書かれており、「伝えたいことをどのように伝えるのか?」は私にとって最も注目していることの一つだからです。
■感想文に「自分の気持ち」が書けない子どもたち
私ごとになりますが、子どもたちの教育を専門に、36年以上携わってきました。その間、さまざまな科目を指導してきましたが、国語教育、特に本書でも触れられている「作文と感想文」には大きな問題があると考えています。 まず、子どもたちは書き方を教わっていません。そのため、作文はただの時系列の記述であったり、読書感想文はあらすじだけを書いたりしてしまう子もいます。さらに、先生から「自分の気持ちを書こう」と言われても、気持ちを表現する言葉のストックが頭にないので、「よかった」「面白かった」「楽しかった」程度の表現で終わってしまうこともしばしばです。 ときに感想として「印象の残った」という少々格式の高い言葉を使ったとしても、何が具体的にどのように印象に残ったのかまで表現することは稀であるため、全体として曖昧模糊な文章となってしまいます。 そのような現実があるにもかかわらず、学校では具体的な作文指導はされないため、子どもたちにとって作文や感想文は“やっつけ仕事”か、忌避すべきものになってしまっている現実があります。