金総書記と娘が抱き合う“北朝鮮らしくない”映像公開の訳 目指す「新しい指導者像」
北朝鮮で公開された新年祝賀行事の映像の中で、「金正恩総書記の妹・与正氏の子どもが初めて公開されたのではないか」と話題になっている。そして、金総書記親子の映像には“ある狙い”があるようだ。 【画像】
■なぜ?映像に金総書記と娘が抱き合う姿
北朝鮮メディアは7日、新型ミサイルの発射実験の映像を公開した。 6日に発射した極超音速の中距離弾道ミサイルだとし、音速の12倍の速度に達し、1500キロ先の目標水域に着弾したと成功をアピールした。 金総書記 「このミサイルが、太平洋地域の敵たちを牽制(けんせい)することになるだろう」 発射を見守る金総書記のかたわらには、娘のジュエ氏の姿があった。親子の姿は、新年祝賀公演でも見られた。 大晦日に車から降りてきた金総書記とジュエ氏が、腕を組みながら仲良く歩く様子も。歌や踊りなど、お祝いムードのなか、金総書記のとなりには常にジュエ氏がいた。 祝賀公演には、金総書記の妹・与正氏の姿もあった。「手をつないでいるのが、与正氏の子どもなのでは」と注目されている。 この映像について、朝鮮半島情勢に詳しい毎日新聞の客員編集委員・鈴木琢磨氏に話を聞いた。 鈴木氏 「他の人も家族を連れてきているというところから見て、与正氏も子どもを連れてきていると見るのが自然だ」 鈴木氏は「この新年祝賀公演において特筆すべきシーンがあった」と指摘する。 鈴木氏 「新年を迎えた時のシーンですが、父と娘が抱き合ってキスをする北朝鮮らしくない演出。これは欧米のスタイルをまねているわけです。新しいスタイルの北朝鮮の指導者像を見せ始めていると感じた」 金総書記が目指す「新しい指導者像」とは、どんなものなのか…。 鈴木氏 「いわゆるヨーロッパスタイル。私が聞いたのは英国王室を一つのモデルにした。本当の意味の“ロイヤルファミリー化”という形をイメージとして、そういうものを志向している。共産主義、社会主義として世襲は否定的に見られてきたが、むしろ世襲を否定的に見られない」 さらに、鈴木氏は「与正氏を入れたことにも狙いがあるのではないか」と話す。 鈴木氏 「金正恩氏の娘だけではなく、金王朝というロイヤルの全体も含めて可視化しようと。そのボリューム感が、むしろ王室にふさわしい」