荒廃するウクライナがまさかの「資源大国」に…! 戦争が生み出す「新時代の石油」の正体
「データは新しい石油」という言葉がある。これは英国の数学者クライブ・ハンビーが唱えたもので、データは石油と同様、精錬(加工や分析)しなければ価値を生まない。しかしこの言葉はむしろ、「データは新しい資源となり得る」というポジティブな意味に捉えられ、データが生み出す価値に大きな注目が集まることとなった。 【写真】いま全米が注目…トランプの「美人すぎる側近」の正体! そしていま、この解釈が正しければ、ウクライナは21世紀において新たな「資源大国」になる可能性がある。ロシアによる侵攻が続き、国土が荒廃しているウクライナがなぜ資源国になるのか――カギを握るのは「ドローン」である。
ウクライナに蓄積される「ドローンデータ」
ウクライナは2022年以降のロシアによる侵攻に対し、ドローンを積極的に活用してきた。前線では、偵察や攻撃だけでなく、戦場を俯瞰するために無数のドローンが飛び交っている。中には人間が操縦するのではなく、自律的に飛行するものもある。その結果、驚くほどのデータが日々生成され、集積されているのだ。 ロイターの報道によれば、ウクライナは前線において「OCHI」というシステムを運用している。これは1万5000人以上とされるドローン部隊から日々収集される、動画データや各種の観測データを蓄積するシステムで、2022年の運用開始から現在までで実に200万時間(約228年分)の戦場映像が保管されているという。さらに毎日5~6テラバイトにもおよぶデータが追加されているそうだ。 また、いまウクライナでは、非常に多彩なドローンが運用されている。ウクライナ国防省の発表によると、敵陣奥深くへの攻撃を実行する無人機や、戦闘車両を狙い撃つための特攻型無人機、さらには偵察に特化した小型ヘリコプター型や固定翼型など、そのバリエーションは幅広い。これらの異なる形態・機能を持つ機体から得られる映像やセンサー情報は、それぞれに固有の性質や特徴を持つ。 オーストラリア陸軍の研究機関AARC(Australian Army Research Centre)が発表した報告書によれば、たとえばDJI Mavicのような市販のドローンが、高精度の映像を撮影するために使われている。この映像を兵士が確認し、敵装備や要塞の具体的な位置を把握するために使用されるそうだ。一方で軍事用の攻撃型ドローンには、高解像度カメラやレーザー照準システムが装備されており、そこから得られたデータは砲撃やミサイル攻撃に必要な目標座標を割り出すのに使われる。中型・大型の偵察用ドローンは、長時間飛行して広範囲のデータを取得することが可能であり、攻撃後の目標破壊の確認や、戦闘地域での被害状況と成功率といった戦闘評価用のデータを収集する。夜間や煙幕の影響がある場面では、赤外線カメラやサーマルセンサーを搭載した機体が活躍する。このようにウクライナは、状況に応じて最適なドローンを活用し、結果として膨大かつ多様なデータを取得している。 この圧倒的なデータの規模と多様性こそが、「ウクライナ=データ資源大国」説の背景にあるのだが、同国が持つドローンデータが注目される理由がもうひとつある。それはAIの存在だ。