液体推進剤で高効率飛翔…観測ロケットに来月搭載、JAXA・名大が開発した「デトネーションエンジン」の性能
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と名古屋大学は、衝撃波によって発生する燃焼現象を利用した「液体推進デトネーションエンジンシステム2(DES2)」を開発した。液体推進剤を利用するロケットエンジンで、気体燃料に比べて効率的に飛翔できる。8月11日に打ち上げ予定の観測ロケット「S―520―34号機」に搭載する。 デトネーションエンジンシステム(DES)は、高い周波数(1―100キロヘルツ以上)でデトネーション(爆轟〈ごう〉)波や圧縮波を発生させ、反応速度を格段に高める。ロケットエンジンを軽量化し、圧力や推力を容易に生成・高性能化できる。JAXAの羽生宏人教授(観測ロケット実験グループ長)や名大未来材料・システム研究所システム創成部門、同大学院工学研究科の笠原次郎教授の研究グループ、慶応義塾大学、室蘭工業大学などが開発してきた。 「DES2」の燃料はエタノール、酸化剤に液化亜酸化窒素(N2O)などの液体燃料で、充填した燃料を窒素(押しガス)で加圧し押し出す。その後、旋回型デトネーションエンジン(RDE)、パルスデトネーションエンジン(PDE)を通し推進力となる。 製造はネッツ(埼玉県鶴ケ島市、中村秀一社長)が担当。計画から開発製造まで約3年かかった。従来のDESと比べ、液体燃料のため固体燃料より効率良く燃料を積むことができる。エンジン部品はほとんど民生品でコストダウンも図れる。 JAXAの羽生教授は「現在日本は、DESの技術で世界をリードしていると考える。まずはエンジンをロケットに載せ、宇宙空間で作動し、評価を得ることが大切」とした。名大の笠原教授は「将来的に、エンジンシステムの熱対策なども考えていきたい」としている。