武田薬品・第一三共・アステラス…製薬3社、通期見通し上方修正の要因
製薬企業は各社とも堅調な成長を見せる。治療ニーズが大きながん領域をはじめとした主力製品のグローバルでの普及に加え、為替の円安効果により、3社が2025年3月期連結業績予想(国際会計基準)を上方修正した。円安影響による売上高の拡大は、海外で発生する費用の増加の影響を上回り、営業利益の好調にも貢献する。 武田薬品工業は24年度の通期予想について、全ての利益段階を上方修正した。クリストフ・ウェバー社長は「上期の業績に加え、通期の為替前提の見直しが影響する」と説明。想定為替レートを1ユーロ=160円から同165円に修正したことで、海外でのコストにはマイナス影響が生じるものの、主力製品の潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンタイビオ」の成長加速とその他の主力製品の堅調な伸長で、売上高は5月公表比1300億円増の4兆4800億円になると見通す。 第一三共は抗がん剤「エンハーツ」の好調が続く見通しだ。抗体薬物複合体(ADC)「HER3―DXd」が米国で発売が遅れたものの、エンハーツや抗凝固剤「リクシアナ」といった製品の成長を見込む。奥沢宏幸社長は「4月公表予想に対する円安の進行による為替影響は、売上高で約370億円の増収、コア営業利益で80億円を見込む」とし、為替の円安影響を追い風に、グローバル製品の伸びがさらに業績を後押しする。 アステラス製薬も、前立腺がん治療剤「イクスタンジ」をはじめとした主力製品の売り上げが拡大する。想定為替レートを、4月公表時の通期予想における1ドル=145円から同149円に、1ユーロ=155円から同160円にそれぞれ修正。販管費や研究開発費などが増加するが、イクスタンジをはじめとしたその他の主力製品の好調を見通し、通期売り上げ予想を上方修正した。 エーザイは業績予想を据え置く。主力製品の抗がん剤「レンビマ」などの製品の利益をアルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ」の市場浸透や医療体制整備の投資に振り向け、さらなる売上げ拡大を図る。