ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソン（Arturo Holmes/WireImage）

OpenAIは、同社がChatGPT向けに開発した合成音声のSky（スカイ）が、映画でスカーレット・ヨハンソンが演じた人工知能（AI）アシスタントの声にそっくりであるという本人からの抗議を受け、米国時間5月20日にその公開を停止した。同社は、ヨハンソンから訴訟を起こされる可能性に直面しており、専門家は、テクノロジーによって音声クローンの作成が容易になった今、同様の問題は他の誰にでも影響を及ぼす可能性があると述べている。 専門家は、ヨハンソンとOpenAIの争いで浮上した法的問題は、AIに特有のものでも、現代的なものでもないとフォーブスに語り、1980年代に歌手のベット・ミドラーやトム・ウェイツらも同様の問題に巻き込まれたと指摘した。 法律事務所フォーリー&ラードナーのジェフリー・グリーンらによると、ヨハンソンはOpenAIに対し、既存の法律のもとでプライバシー権、著作権、パブリシティ権などに関連する訴訟を起こす可能性があるという。また、OpenAIの行為は違法とされる可能性があり、他の著名人も同様の被害を被る可能性があるとグリーンらは述べている。 声などの特徴をより簡単かつ正確に複製できるテクノロジーの進歩は、なりすましの問題を悪化させている。サンフランシスコ大学のティファニー・リー法学教授は、この問題はハリウッドの枠をはるかに超えていると語った。 「AIを使って他人の声をクローン化する行為のターゲットは、有名人や公人だけに限らない」とリー教授は警告し、その例として人々の声をクローン化するAI電話詐欺の急増を指摘した。同教授は、法律が現代のテクノロジーに追いつくように更新されるべきだと述べている。 フォーリー&ラードナーのグリーンらは、ヨハンソンのケースが「個人の声や画像の使用について、より明確な法律を制定する必要性が高まっていることを強調するものだ」と指摘した。 OpenAIは、Skyの声がヨハンソンに似ているとの指摘を受け、その声を削除した。ヨハンソンは、Skyが彼女自身の声に酷似しており、親しい友人でさえも彼女の声だと間違えるほどだったと主張している。また、ヨハンソンはアシスタントの声を担当してほしいとのOpenAIからの依頼を2度にわたり拒否したと述べている。