ピアノ・野球・学習…能登被災地で学びの場が消滅、子供たちに「体験格差」
[能登地震1年]<4>
「ピアノの先生が引っ越してしまい、教室が閉まった。小学校入学前から習っていたので、もっと続けたかった」。石川県輪島市の中学1年の女子生徒(12)は肩を落とす。能登半島地震で自宅のピアノは壊れ、しばらく弾いていない。同級生が学校で上手に演奏しているのを見て、うらやましく思うこともあったという。 【3Dモデル】85キロにわたって海底隆起、凄まじい地震のパワー
奥能登地域では地震後、習い事教室やスポーツチームが消え、子どもの「体験機会」が失われている。
輪島市内に四つあった少年野球チームは、グラウンドに仮設住宅が建つなどして活動場所が減り、一つに統合された。チームを去った子もいる。小学6年の男子児童(11)は「僕は野球を続けられて良かったけど、練習場所のグラウンドは一部しか使えなかった。広いところで思いきり打ちたかった」と残念がる。
公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」(東京)が11月に公表した、被災した保護者252人へのアンケートでは、96・8%が「地震後に教育機会が減った」と回答した。「習字教室が全壊した」「水泳クラブのプールが壊れて使えなくなった」などの窮状が寄せられた。
子どもに関する困りごとは「教育資金」が69・8%で最も多く、壊れた家の解体費がかさむことや、収入減を訴える声が目立った。
家庭の困窮で、習い事などを経験できない「体験格差」が近年、問題視されているが、同法人の今井悠介代表理事(38)は「能登では困窮に加え、体験の場自体が消滅したことによる体験格差が起きている」と指摘。子ども時代の体験には、人生の選択肢を広げる意義があるとして、「困窮家庭には手厚い公的支援が必要だ。活動場所を失った事業者には公共施設を提供してほしい」と訴える。
■
被災自治体はこれまで、公教育の復興に注力してきた。他校の教室を「間借り」して授業を続けた小中学校は、4月時点で12校あったが、仮設校舎の建設が進み、12月時点で4校に減った。