ピアノ・野球・学習…能登被災地で学びの場が消滅、子供たちに「体験格差」
被災した6校を1校に集約した輪島市の「合同小学校」では、秋に運動会が開かれ、今月14日には6年生による「復興音楽隊」の発表会が行われた。
子どもたちの前向きな姿を見た山岸多鶴子校長(60)は、「大人も元気をもらった」と振り返る。一方、地震で地域の体験機会が減ったことについて、「校外の活動は、子どものもう一つの居場所。やりたいことを思いきりやれる環境が戻ってほしい」と語る。
体験機会や地域の学び場の喪失は、人口流出にもつながる。小学生の子を持つ輪島市内の男性(43)は「英語教室や塾など、地元の教育環境は乏しい。将来を思うと転居を考えてしまう」と打ち明ける。
奥能登4市町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)の児童生徒数は、昨年度は2590人だったが、地震後の今年度は1910人に急減した。10年前の半数弱で、今後も減少が見込まれている。
お茶の水女子大学の浜野隆教授(教育社会学)は「保護者の不安を払拭(ふっしょく)しなければ人口流出は止まらない。自治体は公教育の将来像を示すとともに、地域全体の教育環境を整える必要がある。体験機会の復興は、行政が積極的に関与できるかどうかがカギだ」と話す。