<ウクライナ停戦合意> どこまでプーチン大統領の“思う壺”なのか? 国際政治学者・六辻彰二
笑顔のロシアの不安材料
ウクライナ危機は、冷戦終結後にEUやNATOが中東欧に加盟国を増やし、その境界線が自らの勢力圏に迫ってきたことへのロシアの危機感を大きな背景とします。ロシアに隣接するウクライナに手を伸ばしたことで、いわば欧米諸国は「虎の尾を踏んだ」わけですが、領土を広げることではなく、ウクライナ全体が欧米圏に組み込まれることの阻止がロシアの最大の目的だとすれば、「ミンスクII」はそれに適う内容といえます。逆に、その交渉を有利にするためなら軍事行動も辞さないロシアに、欧米諸国が圧倒された格好です。 ただし、停戦が実現するかは不透明です。最大の懸念材料は、軍事的にウクライナ軍を圧倒して活気づく親ロシア派を、ロシア政府がどこまで抑えられるかです。ロシアにとって交渉を有利にするコマでもあった親ロシア派が、その意思を超えた活動を拡大させれば、独仏の仲介を静観していた米国がウクライナ支援を本格化させる契機になり得ます。それは戦闘のさらなる長期化、大規模化を招くといえるでしょう。