スズメもネコジャラシも大陸からやってきた 外来か在来種かはどう決める?
外来生物による生態系や人間社会に対する悪影響は、世界的にも生物多様性保全にかかる重大問題として捉えられています。わが国でも、生物多様性国家戦略において外来生物防除は重要課題であり、外来生物法という外来生物対策専門の法律も制定されています。 この法律の中では、法律上の外来生物とは、「明治時代以降に日本に導入された生物種」と定義されています。言い換えれば、明治時代より前、つまり江戸時代以前に日本に持ち込まれた生物は、原則、この法律では規制対象とはしない、ということになります。
「人の手によって移動された生物」の歴史は古い
なぜ、「明治時代以降」という線引きがなされたのか? 実際決めたのは法律のアドバイザーとして召集された有識者(学者)たちだったのですが、その根拠は、明治時代は、開国を皮切りに人間の移動や物流が盛んになり始めた時代の節目であるから、とされています。 しかし、島国である日本は、その歴史を遡れば、縄文の時代から人の移入が繰り返されており、その過程で様々な生物が大陸から持ち込まれてきたと考えられます。つまり、「外来生物」=「人の手によって移動された生物」の歴史はずっと古くから始まっていたと言えます。 例えば、私たちにとって馴染みの深い、日本の代表的な留鳥(渡りをせずに国内に留まって繁殖する鳥類)であるスズメは、稲作文化の到来とともに大陸から人に伴って移動してきた外来種と考えられています。 イヌタデやチガヤ、エノコログサ、タマガヤツリなど、里山で馴染みの植物達も、稲作文化とともに大陸から渡って来たとされる外来種です。
モンシロチョウは、奈良時代に、大陸からダイコンや菜の花などのアブラナ科作物が持ち込まれた際に、その葉に紛れて日本に移入された外来種とされます。 公園や牧草地、あるいは畑や田んぼの周辺に普通に生えているシロツメクサは通称クローバーと言われていますが、これも外来種です。1846年にオランダから贈られてきた陶器を梱包するのに詰め物・緩衝材として使用されたのがこのシロツメクサ=「白詰草」だったと言われています。この最初の持ち込みをきっかけにその後も牧草や緑化植物として輸入され、日本に定着したとされます。