スズメもネコジャラシも大陸からやってきた 外来か在来種かはどう決める?
家屋侵入や農作物被害をもたらすハクビシンは外来生物ではない
今の大人世代が子供時代に、身近な自然でよく見かけたクサガメは、現在その生息域が外来種ミシシッピアカミミガメの分布拡大によって圧迫されているとされますが、このクサガメ自体も実は18世紀末ごろに中国大陸から持ち込まれた外来種ではないかと疑われています。 その根拠として、国内でこれまで化石が発見されていないこと、また、一番古い文献が江戸時代以前にはないこと、そしてDNAを調べてみると日本で捕獲される個体は、いずれも大陸産の系統とほとんど同じ塩基配列を示しており、島国で隔離されて進化して来た形跡がないこと、などが挙げられています。 近年、都会でもその数が増えて問題とされるハクビシンは、すこし前までは、日本にもともと生息している在来種ではないかと考えられていました。江戸時代の絵巻物なんかに登場する妖怪「雷獣」もハクビシンがモデルだという説もありました。 しかし、ハクビシンは、この江戸時代に大陸から持ち込まれた可能性も指摘されています。さらに明治時代以降にも毛皮用に輸入された記録があり、今、国内で蔓延している集団は外来種の可能性が高いとされます。 結局、ハクビシンについては、家屋への侵入や農作物への被害など、有害な影響が問題視されてはいるものの、日本国内への導入年代が明確ではないという理由から、環境省の外来生物法では規制対象から外されたままになっています。 このように身近な生物が実は外来種であった、あるいは外来種かもしれないという事例はかなりたくさんあり、今後も、歴史的な記録の見直しや、DNAなどの科学的検証が進むことで、「古くから住み着いている外来種」がさらに見つかるかもしれません。 こうなると、結局、どの時代まで遡れば日本本来の生物相の時代と定義できるのか、またどの時代からの外来種を排除もしくは管理の対象とすべきなのか、科学的・生態学的に説明することは難しくなってきます。