「おカタいイメージ」だったJR西日本が、コロナ禍以降に「おおきく変化したこと」
数字で表せない価値の創出
今回の講演やパネルディスカッションでは、「新しい価値の創出」にふれるテーマが多かった。しかも、「ちょっと気分が上がる」「曖昧だけど、なんかいい」「おもろい」「ユニーク」といった、「数字では表現できない価値の創出」がよく語られたのが印象的だった。 これは、筆者の印象に反するものだった。過去20年以上ライターとして鉄道業界をウォッチしてきた経験で言うと、かつて日本の鉄道事業者、とくに旧国鉄のDNAを受け継ぐJRグループは、保守的かつドメスティックで、「数字では表現できない価値」を軽視し、新しいことを最初にやるのをためらう傾向があった。 もちろん、筆者が企画を提案したら、面白がって協力してくれたJRグループの経営者や広報担当者が過去にいた。ただし、たいていは「前例がない」と言って一蹴された。知り合いのJRグループ社員からは「お客様に喜んでもらうための企画を提案したのに、上司に却下された」という話をたびたび聴いていた。 その点においては、コロナ禍を機に、JR西日本グループは何かに目覚めたのだろう。 ぜひ、新しいチャレンジで鉄道のあり方を変え、社会の共感とともにイノベーションを起こしてほしい。そして、そのことを日本だけでなく、海外にも発信してほしい。
川辺 謙一(交通技術ライター)