「おカタいイメージ」だったJR西日本が、コロナ禍以降に「おおきく変化したこと」
京阪神の将来を産学官で考える
筆者にとって興味深かったのは、2日目の午後に開催されたパネルディスカッション「京阪神を中心とした産学官連携によるイノベーションの創出とこれからのまちづくり」だ。なぜならば、JR西日本エリアでもっとも人口が集中している関西圏が題材になっていただけでなく、日本全体が直面している課題にも通じる内容だったからだ。 このパネルディスカッションでは、京都府・大学(大阪公立大学・神戸大学・東京都市大学※)・JR西日本に属する5人が登壇し、関西圏の持続的発展について議論した(※の人物は、経営コンサルティングファームの社員で、パネルディスカッションのコーディネーター)。 冒頭では、コーディネーターによる講演が行われた。その内容は、関西圏が抱えるきびしい現状と、それに対応するための提案だ。 現在関西の3大都市(京都・大阪・神戸)は、きびしい状況に直面している。人口が減少しているだけでなく、都市の経済規模を示すGRP(域内総生産)が年々下がっている。森記念財団都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合ランキング2023」では、東京は第3位であるのに対して、大阪は第37位で、京都と神戸は福岡(第42位)にも及ばず、圏外となっている。ただ、そのような状況においても、関西3大都市が見据えるライバルは国内(東京)ではなく、海外にあると定義されていた。
「おもろい人」を集める
そこで、関西圏ならではの対策が提案された。それは、3大都市の個性をそれぞれとがらせて魅力を高め、定住者や滞在者を増やすというものだった。 関西圏は、東京一極集中の首都圏とちがい、京都・大阪・神戸という別々の個性(歴史や文化)を持った都市がある。それらは複数の鉄道路線でつながっており、互いにアクセスしやすい。 この特色を活かし、3大都市の個性をそれぞれ伸ばすことができれば、関西圏全体の価値が高まり、人が集まる。イノベーションを予感させる魅力的な提案だ。 その後のパネルディスカッションは盛り上がった。産学官のそれぞれの立場での意見が聞かれ、いつしか話題が1つに収束した。 それが、「おもろい人を集める」である。いかにも関西らしい感覚だ。ここで言う「おもろい人」は、標準語で言う「面白い人」とは微妙にニュアンスが異なる。 たしかに「おもろい人」が集まる都市は、何か楽しいことが起きそうで、魅力的だ。実際に都市計画の研究では、海外の事例もふくめ、そのような都市が発展するとわかっていると指摘するパネリストもいた。 いっぽう、「おもろい人」を集めるむずかしさを指摘するパネリストもいた。たとえば日本では、ユニークなアイデアを提案する人がいても、上司が「費用対効果は?」「リスクは?」と問い詰めて、イノベーションの種をつぶしてしまうことが多々ある。それゆえ「おもろい人」を集めるには、まずその個性を尊重し、そういう人に好かれるための下地づくりが必要になる。 その点関西圏は、その下地づくりをしやすい環境がある。なぜならば、関西圏には「民営」の公共交通機関が多数存在し、「官」がやりにくい「おもろい」取り組みを駅中心で展開できるからだ。これは、公共交通機関が「公営」である他国の都市圏にはない飛び抜けた個性だ。