「おカタいイメージ」だったJR西日本が、コロナ禍以降に「おおきく変化したこと」
「すごくまじめな会社」からの転身
その後は、山崎氏と、JR西日本取締役常務執行役員デジタルソリューション本部長の奥田英雄氏とのパネルデスカッションが行われた。奥田氏の服装は、スタッフと同じシャツ姿。社長とはちがい、ジャケットを羽織っていなかった。 奥田氏によると、本人はもともと入社以来長らく鉄道に関わった人物。かつてのJR西日本は「すごくまじめな会社」だったという。 ところがコロナ禍を機に、同社は変わる必要に迫られた。人々のライフスタイルが変わって移動の概念が変わり、会社全体で変化することが求められたからだ。 そこで奥田氏は、デジタルソリューション本部を立ち上げた。「すごくまじめな会社」から脱却するため、同社の一部の部署で社員の服装を自由にした。 また、鉄道による移動の楽しみや高揚感を演出するため、デザイン思考の専門家である山崎氏の協力を得た。その結果、同社が目指す方向性が整理され、「動くことを価値にする」というコンセプトが生まれ、先述した「Wesmo!」の開発に至った。 最後に奥田氏は、「共感が大切」と述べていた。曖昧だが直感的なものが共感を生み、結果的に成功につながるという意味だ。 以上の話から、前編で紹介した「鉄道会社らしくない試み」が次々と実現した背景がわかった。大阪駅をバーチャル空間に再現する。鉄道育成アプリをつくる。どれも直感的に面白そうで、共感を生みそうな企画だったからだ。 なお、JR西日本は、山陽新幹線の車両で「新世紀エヴァンゲリオン」や「ハローキティ」とコラボした実績がある。その点においては、「鉄道会社らしくない試み」をしやすい企業風土がもともとあったのではないかと筆者は感じた。
バリエーション豊かな話題と登壇者
講演会場では、基調講演以外にも多くの講演やパネルディスカッションが行われた。その内容は、環境保全やインフラの維持、まちづくり、技術紹介、経営、働き方、鉄道の楽しみ方、AIの活用などの技術紹介などというように、多岐にわたっていた。 産学官の人物が登壇し、JR西日本グループの社員とディスカッションする場面もあり、よい意味で鉄道業界の域を超えた。 ただし、女性の登壇者の少なさが気になった。シャツを着たスタッフには女性が多かったのに、である。これは、日本の社会や鉄道業界の特殊性も関係しているだろうが、鉄道の利用者の約半分は女性である。