「国境通信」 違和感ぬぐえぬ、福岡市動物園ゾウの受け入れ 川のむこうはミャンマー ~軍と戦い続ける人々の記録 #9
■在日ミャンマー人有志の声 短く伝えたメディア その感覚で、今回の福岡市動物園へのゾウの受け入れを考察すると、やはり違和感がぬぐえない。 受け入れの方針自体は、アウン・サン・スー・チー氏の民主政権時代に大筋で固まったものであったとは言え、今回ゾウを移送するための具体的なやり取りは、現在のミャンマー軍事政権の担当部門との間で行われたはずだ。 その際に福岡市は、ミャンマーの現状について検討したのだろうか? 軍事政権とやり取りすることに、異を唱える人は誰一人いなかったのだろうか? 「クーデターのこと、国民への弾圧のことはこの際一旦忘れて、ゾウの受け入れを進めましょう」内部でのそんな会話が聞こえてきそうである。 ゾウの受け入れ直前に、在日ミャンマー人有志が動物園前に集まって、今回の受け入れが「軍に政治利用されてしまう」として、福岡市に対して批判の声を上げた。 各メディアが短く伝えたが、ゾウの受け入れ自体の是非を問う内容のニュースとはならなかった。 「ゾウさんのエサ代の寄付にご協力をお願いします」息子が通う保育園に迎えに行くと、入り口にこんな張り紙とともに、募金箱が置いてあった。 「忘れられた紛争地」という言葉と一緒に、アインたち避難民の人々の顔が、浮かんでは消えた。 (エピソード10に続く) *本エピソードは第9話です。 ほかのエピソードは以下のリンクからご覧頂けます。 #1 川を挟んだ目の前はミャンマー~軍の横暴を”許さない”戦い続ける人々の記録 #2 野良犬を拾って育てる避難民 #3 農園の候補地を下見 タイ人の地主に不審者と間違われる #4 治安の悪化のニュース そして深夜に窓を叩く音 恐る恐る外を覗くと・・・ #5 オクラを作ろう!ようやく動き出した事業 #6 アインの妻が妊娠 生まれてくる子供の未来は #7 オクラの栽培がスタート しかし”目の前が真っ暗”に…支援とビジネスを両立する難しさ #8 協力企業の撤退で振出しに戻った事業~日本にいる間に考えたこと