「ハイブリッド版」が真打ち? アバルト500e 長期テスト(最終) 短距離メインの通勤急行!
短距離メインの通勤急行 ハイブリッド版が真打ち?
アバルト500eは、短距離メインの通勤急行として割り切れば、かなり楽しい1台になる。職場が自宅から遠くなく、子供がいない人には、魅力的なバッテリーEVだといえる。とはいえ荷室は狭く、サスペンションが硬く乗り心地は良くはないが。 世界最高峰のホットハッチには、日常性にある程度の妥協を求める例は存在する。しかしアバルト500eの運転体験は、それに目をつぶれるほど出色なわけではない。同じ金額を用意すれば、万能選手的なフォルクスワーゲン・ゴルフ GTIが選べてしまう。ウ~ン。 活発に走らせている時でも、完全には没頭できない。駆動用バッテリーの残量が頭によぎるから。走りがいのある一般道で全力を引き出すには、フィーリングが薄く、シャシーの安定感は心もとなかった。 俯瞰すると、フィアット500eでも充分に運転は楽しむことができる。航続距離はより長く、英国価格はお手頃でもある。これも、好きだと即答できない理由の1つになる。 フィアットは、大容量のバッテリーを開発中だという。もし価格が大幅に上昇しなければ、アバルト500eの訴求力は確実に高まるはず。 しかし2026年には、ハイブリッド版が登場する予定。バッテリーEV版と同等にチャーミングな容姿なら、こちらを選びたいと考えてしまうのは、筆者だけではないだろう。
セカンドオピニオン
アバルト500eは、市街地での利用にぴったり。短いホイールベースと、パワフルな電気モーターで、狭い路地や混雑した幹線道路をキビキビと快適に進める。 しかし、回生ブレーキの効きが不自然に強すぎる。バックで駐車する場合などは、滑らかに枠内へ導くのが難しいと感じるほど。 ジョナサン・ブライス(Jonathan Bryce)
テストデータ
■気に入っているトコロ こだわりのデザイン:細部までこだわられたデザインは魅力的。ヘッドライトの処理は、特に筆者好み。 タッチモニター:インフォテインメント・システムの機能はベーシックで、稀に反応が重い時もあったが、使いやすい。2024年ではベストの1つ。 エネルギッシュ:制限速度の範囲内で、充分にホットハッチらしさを楽しめる。 ■気に入らないトコロ 大げさなエンジン音:繁華街で誤って人工のエンジン音をオンにしてしまうと、筆者はちょっと恥ずかしい。 回生ブレーキ:低速域では、回生ブレーキの効きが唐突。調整する余地はあるはず。 ■走行距離 テスト開始時積算距離:4622km テスト終了時積算距離:1万610km ■価格 モデル名:アバルト500e ツーリスモ(英国仕様) 新車価格:3万8195ポンド(約745万円) テスト車の価格:3万8795ポンド(約757万円) 現行の価格:3万8140ポンド(約744万円) ■オプション装備 アシッド・グリーン塗装:600ポンド(約12万円) ■電費&航続距離 カタログ航続距離:252km 駆動用バッテリー容量:37.8kWh(実容量) 平均電費:6.4km/kWh 最高電費:7.7km/kWh 最低電費:5.7km/kWh 現実的な航続距離:243km ■主要諸元 全長:3631mm 全幅:1683mm 全高:1529mm 最高速度:154km/h 0-100km/h加速:7.0秒 CO2排出量:-g/km 車両重量:1410kg パワートレイン:AC永久磁石同期モーター 急速充電能力:85kW(DC) 最高出力:156ps 最大トルク:23.8kg-m ギアボックス:シングルスピード(前輪駆動) トランク容量:185L ホイールサイズ:7.0J 18インチ タイヤ:205/40 R18 ■メンテナンス&ランニングコスト リース価格:652.8ポンド(12万7000円/1か月) メンテナンスコスト:なし その他コスト:なし エネルギーコスト:240ポンド(4万7000円/電気) エネルギー含めたランニングコスト:240ポンド(4万7000円/電気) 1マイル当りコスト:0.06ポンド(11円)
フェリックス・ペイジ(執筆) 中嶋健治(翻訳)