富士通の中期経営計画折り返し、決算で見えた幾つもの「転換点」
富士通にとって、2024年度上期(2024年4~9月)は、2025年度を最終年度とする中期経営計画の折り返し地点であり、上期の連結業績はその中間評価を示すものとなった。同社が10月31日に発表した2024年度上期の連結業績は、売上収益が前年同期比0.9%減の1兆6966億円、調整後営業利益が同56.8%増の795億円、当期純利益が同4.6%減の356億円だった。だが、経営の実力を示す調整後営業利益は、上期として過去最高を達成。利益体質を強化していることが浮き彫りになった。 主力事業であるサービスソリューションは、売上収益が前年同期比3.4%増の1兆175億円、調整後営業利益は同39.8%増の887億円と、いずれも上期としては過去最高だ。業績を説明した代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は、「ここまでの実績は、中期経営計画のゴールに向けて、ほぼ計画通りに推移した。中でも主力のサービスソリューションは、増収増益基調が継続し、国内のDXやモダナイゼーションに対するデマンドの強さがある。『Fujitsu Uvance』へのシフトによる事業ポートフォリオの変革が進み、採算性の改善にも着実な成果が出ている」と、決算の内容に強い手応えを示した。 今回の2024年度上期業績は、中期経営計画の折り返し点になるが、幾つかの意味で転換点を迎えたといってよさそうだ。1つは、Fujitsu Uvanceの転換点である。 同期のFujitsu Uvanceの売上収益は前年同期比31%増の2007億円となり、サービスソリューション全体に占める売上構成比が前年同期の16%から拡大し、初めて20%に到達した。2025年度に30%を占める計画だが、それに向けて事業規模を着実に拡大していることが示された。 磯部氏は、「Fujitsu Uvanceの受注、売り上げがともに好調で、計画を上回っている。目標達成に向けて力強いペースで進捗している」と自信を見せる。 特に力強い成長を示しているのが、「Vertical」エリアだ。社会課題解決のためのクロスインダストリー4分野で構成される同エリアは、2024年度上期の実績で、前年同期比93%増の632億円と、約2倍の規模に成長。これに対して、クロスインダストリーを支える3つのテクノロジー基盤で構成する「Horizontal」エリアの売上収益は同14%増の1375億円(同1208億円)だ。 Fujitsu Uvance全体でのVerticalエリアの構成比が約3分の1にまで拡大し、この構成比からも、Fujitsu Uvanceならではの特性を発揮した事業成長が見られていることが分かる。 2024年度通期の見通しでは、Verticalエリアで1800億円、Horizontalエリアで2700億円を計画しているが、この数字から逆算すると、下期のVerticalエリアの売上収益が1168億円、Horizontal エリアが1325億円になり、Verticalエリアの比率が5割近い水準にまで高まる。ここからも、Fujitsu Uvanceのビジネスが転換点を迎えていることが明確だ。 また磯部氏は、「Fujitsu Uvanceのオファリング開発への投資が続いているが、2024年度がピークになり、2025年度は減っていく」と言及する。このように、これまで投資先行だったFujitsu Uvanceが成果を刈り取るフェーズへと入るという転換点も迎えている。 決算会見で磯部氏は、「オファリング開発への投資を一定量では行うが、増やし続けるフェーズではなくなった。頂(ピーク)は超えている」とコメント。この上期にFujitsu Uvanceの開発投資がまさに転換点を迎えたことが示された。