8万円台でRyzen 7 8845HSは狙い目。「GMKtec NucBox K8 Plus」
現在GMKtecはZen 4アーキテクチャのRyzen 7 8845HSを搭載したミニPC「NucBox K8 Plus」を販売中だ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。 【画像】前面。OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2 2基、3.5mmジャック、電源ボタン ■ Zen 4のRyzen 7 8845HSを搭載しOCuLinkも対応! 9月にRyzen 9 PRO 6950Hを搭載した同社の「NucBox M7 Pro」をご紹介したが、今回の「NucBox K8 Plus」は、天板を回して取り外す筐体機構などはほぼそのまま、CPUをRyzen 7 8845HSに載せ替えたモデルとなる。 前者はSKU的にRyzen 9、後者はRyzen 7。これだけ見ると前者の方が強そうだが、そこはCPUアーキテクチャ的にZen 3+とZen 4との違いもあり、どっちがどうなのか気になるところ。主な仕様は以下の通り。 プロセッサはZen 4アーキテクチャのRyzen 7 8845HS。8コア16スレッド、クロックは3.8から最大5.1GHz。キャッシュ8MB/L2、16MB/L3。TDPは45W(cTDP 35~54W)。Ryzen 9 PRO 6950Hが3.1GHzから最大4.9GHzなので、クロックだけ見てもこちらの方がパフォーマンスが高そうだ。なおこのプロセッサはAIエンジンとして最大16TOPSのNPUを内蔵している。 メモリは16GB/DDR5-5600 2基(SO-DIMM)の計32GB。最大96GBまで対応する。ここもDDR5-4800だったので若干速くなっている。ストレージはM.2 2280 SSD 1TB/PCIe 4.0。M.2スロットは2つあり1つ空き。「NucBox K8 Plus」はPCIe 3.0。M.2 SSDを搭載していたのでストレージも速い。 グラフィックスは、プロセッサ内蔵Radeon 780M(12コア)でZen 3+の680Mからパワーアップしている。外部出力用にDisplayPort、HDMI 2.1、USB4 2基を装備し、4同時出力可能。 このように、プロセッサ、メモリ、ストレージ、iGPUすべてが「NucBox K8 Plus」よりスペックが上がっているため、総合的に上だと思うが、後半のベンチマークテストで検証してみたい。 OSはWindows 11 Pro。23H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価した。 ネットワークは2.5Gigabit Ethernet 2基、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB 4 2基、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0 2基、3.5mmジャック、OCuLink。ここは同じだ。 サイズと重量は実測で約125×130×55mm、638g。価格はベアボーン(OSなし)で5万9,533円、32GB/1TBで8万3,958円、32GB/2TBで9万1,591円。いずれも10万円未満なので企業でも買いやすいだろう。 筐体は「NucBox M7 Pro」と瓜二つ。重量も実測で638gと同じ。プロセッサだけ入れ替えたのでは?的な感じだ。また天板には回す方向などの印刷が追加されている。余程問い合わせが多かったのだろう(笑)。 前面はOCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2 2基、3.5mmジャック、電源ボタン。背面にUSB 2.0 2基、DisplayPort、HDMI、2.5Gigabit Ethernet 2基、USB4、電源入力を配置。裏はVESAマウンタ用のネジ穴がある。 付属品はACアダプタ(サイズ約130×55×30mm、重量415g、出力19V/6.32A)、VESAマウンタおよびネジ、HDMIケーブル。いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、USB4があるのでType-Cケーブル1本でOK。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。 内部へのアクセスは、天板を左に回し外すと、その下にネジが4本あるのでこれも外す。するとファン付きのパネルも外れ、メモリやストレージが現れる。非常に簡単なのだが、個体差だろうか、前回よりは天板がなかなか左へ回らず苦労した。 内部は右側にSO-DIMMスロット 2基。Crucial製が使われている。左にM.2 2280のSSDが1つ。もう1つのM.2コネクタは中央辺りにある。 ノイズや振動などはかなり近づかないと分からず気にならないレベルに抑えられている。発熱もベンチマーテストなど負荷をかけると、リアからちょっと暖かいエアーが出る程度。マザーボードを挟むように上下に配置されたツインクーリングファンが効いているのだろう。 全体的に完成度は高く、2.5Gigabit Ethernet 2基、USB4 2基に加えOCuLinkがあるので外部に強力なGPUを接続可能。ミニPCとしては拡張性も非常に高い。 ■ CPU/iGPUともにパワーアップ! 初期起動時、特にプリインストールなどのアプリなどはなく、Windows 11 Pro(23H2)のまま。構成が構成なだけに何をしても快適に作動する。 ストレージはM.2 2280 1TB SSDの「BIWIN NV7400」。データシートは見当たらなかったが、ここによると、PCIe 4.0 x4、シーケンシャルリード7,400MB/s、シーケンシャルライト6,500MB/sとあり、CrystalDiskMarkの値も近いものが出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約952GBが割り当てられ空き899GB。 2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I226-V 2基、Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel製と、AMDプロセッサ搭載機の割にIntelで固められている。またデバイスマネージャには冒頭に書いたNPUの項目もある。 AMD Software: Adrenalin Editionを見ると、iGPUはRadeon 780M。Zen 3+の680Mから変わっているのが分かる。 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。 Ryzen 9 PRO 6950H搭載「NucBox M7 Pro」と比較するとほぼ全面的に優っている。特に3DMarkが結構な差だ。iGPUがRadeon 680M(12コア)からRadeon 780M(12コア)に変わっているのが主な理由だろう。 CPUもGPUも速く価格はほぼ同じなので、もはや「NucBox M7 Pro」を選ぶというのは“ない”だろう。 以上のようにGMKtec「NucBox K8 Plus」は、Zen 4アーキテクチャのRyzen 7 8845HSを搭載したミニPCだ。そのパフォーマンスはZen 3+のRyzen 9 PRO 6950搭載機を上回る。用途や予算に応じて、ベアボーン、32GB/1TB、32GB/2TBを選べるのもポイントが高い。 特に気になる部分もなく、10万円未満でハイパフォーマンスなミニPCを探しているユーザーに使ってほしい1台だ。
PC Watch,西川 和久